本年度は、主にインフレーション後のreheatingにおける計算に向けた準備として、超対称性理論の基礎とその宇宙論への応用の学習に重点を置いた。いくつかの教科書と主要な論文を読み、また夏に研究滞在したStavanger大学でreheatingと電弱相転移を研究するAnders Tranberg教授とその学生のAnders Haar氏と計算の詳細について議論を行った。その過程で有限温度における場の量子論、さらには非平衡状態の場の量子論の必要性を認識し、その勉強のために東北大学金属研究所とWPI-AIMRの電子物性研究室を複数回訪問し、有限温度・非平衡における多体問題の具体的計算をいくつか行った。 超対称性理論に関連したテーマとして、神戸大学の宝利剛研究員、早田次郎教授と共同で可積分系の幾何学的記述に関する研究を開始した。ハミルトニアン系の相空間の幾何学的対称性を用いて微分方程式系が可積分になるパラメータの組を導き出し、その対称性を記述するKilling tensorから具体的に変数分離座標を求める手法を研究した。この手法を物質中の電子系や一様宇宙を記述する時空の運動方程式に応用する可能性を現在検証中である。 一般相対性理論のツイスター理論を用いた記述において重要になる非正定値計量でそこから構築される曲率の不変量では完全に決定されないものを分類することを目指した研究をStavanger大学のSigbjorn Hervik教授と共同で行った。まずそのような軽量の具体例が多く知られているそれぞれKundt、Walkerと呼ばれる種類の計量を定める幾何学的条件を統合・拡張しより広いクラスの計量を定義した。次にそのクラスに含まれる具体的な計量の形を微分方程式の不変量理論を用いて制限し、曲率の普遍量で完全に決定されない計量の新しい具体例(のクラス)を構築した。
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