研究課題/領域番号 |
14J01322
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
跡部 発 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 局所Gan-Gross-Prasad予想 / 局所テータリフト / 国際情報交換(シンガポール) |
研究実績の概要 |
今年度、私は局所Gan-Gross-Prasad予想のシンプレクティックの場合に挑戦した。Gan-Gross-Prasad予想とは、大域的には、保型表現の周期とL関数の特殊値との関係を予想するものである。周期の局所的な類似物は表現の分岐則である。一方でL関数の側は局所的には特殊値の代わりに符号と呼ばれるものを考える。局所Gan-Gross-Prasad予想とは、表現論の問題である分岐則を数論的な不変量であるL関数の符号を用いて特徴付けるものである。Gan-Gross-Prasad予想には4つの場合がある。局所版ではこのうち3つが解決されている。私はこの最後の場合に挑戦した。 手法としては先攻研究である歪エルミートの場合を模倣した。しかしながら、私の場合には技術的な困難が非常に多くあり、一部では歪エルミートの場合の手法が使えないものがあった。結果的には歪エルミートの場合は完全解決されたのに対し、シンプレクティックの場合は未解決の部分が残る形となった。解決できた部分には、ある重要なクラスが含まれており、本研究により局所Gan-Gross-Prasad予想はこの重要なクラスにおいて、全ての場合に完全解決されたことになる。その意味で本研究は意義深いものであると考えられる。 局所Gan-Gross-Prasad予想は大域的な予想の土台となっている。そのため、局所版の予想の解決は大域版を考える上でも重要である。また、局所版の予想だけでも表現論や数論において、いくつかの応用が考えられる。この観点からも予想の解決は大変重要であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的では、L関数の特殊値の、保型表現の周期を用いた公式を研究することである。もしこのような公式があれば、それは局所的な表現の分岐則の問題に数論的な解釈があることを示唆している。表現論的な問題の数論的な解釈は、一般に大変難しい。 今年度の研究ではこの問題の一つである、局所Gan-Gross-Prasad予想に取り組んだ。これにより、多くの技術を習得することができた。これらの技術は今後の研究生活の上で多いに役立つことが期待される。 また、以前の研究では特殊な状況下であるL関数の公式を証明した。これはGan-Gross-Prasad予想の設定ではない、新しい状況での公式である。同様の公式が次元が低い場合にはより一般的に成り立つことが分かった。これらの公式を比較することで、一般の次元における公式がどのようなものであるべきかという検討がついた。 さらに、低次元の場合には、この新しい公式が導くであろう、局所的な表現論と数論との関係性も見えてきた。このように研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究では、局所Gan-Gross-Prasad予想とPrasad予想に取り組んだ。Prasad予想とは、局所テータリフトと呼ばれる表現論の道具を、特別な場合に、数論的な対象であるLanglands対応を用いて描写するものである。局所Gan-Gross-Prasad予想の完成とPrasad予想の解決により、この局所テータリフトを、全ての場合において、Langlands対応で描写することができると考えられる。まずはこの問題を取り組む予定である。局所テータリフトもL関数の符号が深く関わっていると考えられる。 一方で、研究計画にもあるように、L関数の特殊値の新しい公式の開発にも取り組む予定である。次元が低い場合は一般的に成り立つことが分かったので、次は最初に得られた公式の一般化や高次元の場合に関する類似の公式を探求する。これには、池田氏の宮脇リフトの手法が役に立つのではないか、と考えられる。 また、同時にこの新しい公式に付随するであろう、局所的な結果についても考える。本研究は新しい状況なので、局所Gan-Gross-Prasad予想とは違った面白い結果が得られるかもしれない。
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