研究課題
IRF8が脊髄損傷の病態に与える影響を明らかにする為に、IRF8KOマウスの脊髄に損傷を加え、免疫組織学的解析を行った。WTマウスのCD68+マクロファージが損傷部で収束するのに対し、IRF8KOマウスのマクロファージは走化性が著しく低下し、慢性期になっても収束が完了しなかった。IRF8KOマウスでは脊髄損傷後の再髄鞘化面積がWTのものより顕著に減少しており、髄鞘面積とCD68陽性面積は負の相関を示していた。IRF8KOマウスでは再髄鞘化障害に伴い、残存軸索数が有意に減少していた。これらの結果は、IRF8欠損が脊髄損傷の組織修復に悪影響を及ぼしている事を示している。損傷脊髄中には末梢血から浸潤した単球由来のマクロファージと、脊髄常在性単球であるミクログリア由来のマクロファージが存在する。これらの細胞種は互いに別の起源を持ち、また脊髄損傷における役割も異なる事が指摘されている。IRF8はマクロファージや単球系細胞に発現する転写因子であるが、どちらの細胞種に発現するIRF8が脊髄損傷の病態に影響を与えるのかは不明である。そのため、IRF8KOマウスにIRF8+/+-EGFP+骨髄を移植して [bone marrow (BM); IRF8+/+ -EGFP+]/[spinal cord; IRF8-/- -EGFP-] キメラマウスを作成した。このキメラマウスの損傷脊髄ではEGFP陽性/CD68陽性マクロファージが損傷部中心に向かって収束化した。このことは、脊髄損傷後のCD68陽性マクロファージの収束化には脊髄常在性ミクログリアではなく、末梢血由来のマクロファージにおけるIRF8が必要であることを示している。
2: おおむね順調に進展している
IRF8ノックアウトマウス由来の骨髄細胞をWTマウスに骨髄移植する事で、脊髄損傷後の浸潤マクロファージとミクログリアに対するIRF8の作用の違いを明らかにする独自の解析系を立ち上げ、IRF8が脊髄損傷病態に与える影響を明らかにしている。
今後はマクロファージの損傷中心部への遊走を促す因子の検索及び、その因子とIRF8の関わりを解明するための研究を予定している。更に、IRF8が脊髄損傷後の炎症収束化に与える影響に関しても洞察を深めるべく研究を進める予定である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件)
Science Translational Medincine
巻: 6 ページ: 1-14
10.1126/scitranslmed.3009430