一次粒子のエネルギーが 10の19乗 eV 以上の宇宙線は極高エネルギー宇宙線と呼ばれ、その起源は未だ解明されていない。極高エネルギー宇宙線のエネルギースペクトルや粒子種の測定は既にある程度達成されており、これ以上の大幅な結果の改善はすぐには望めず、この状況を打破するためには新たな視点を取り入れた解析が必要である。そこで本研究ではテレスコープアレイ(TA)実験観測データから極高エネルギーガンマ線・ニュートリノを探索し、その結果を理論モデルなどと比較することで、これまでとは別の視点から極高エネルギー宇宙線の起源を解明することを目的としている。 昨年度に引き続き、TA実験の地表検出器と大気蛍光望遠鏡による同時観測空気シャワー事象を用いて極高エネルギーガンマ線を探索した。解析結果の信頼性向上のため、モンテカルロシミュレーションの統計数を増やし、一次ガンマ線・陽子の検出効率を再計算した。また、この再計算結果を受けてガンマ線の選別基準を改善し、ガンマ線の探索効率を向上させた。更に、系統誤差についてより詳細に検討し、複数存在する高エネルギー相互作用モデルによる系統誤差を考慮するため、高エネルギー相互作用モデル毎のモンテカルロシミュレーションを現在作成中である。 2008年5月から2013年7月までの地表検出器と大気蛍光望遠鏡による同時観測事象を用いた極高エネルギーガンマ線事象探索の結果は、得られた一次ガンマ線候補事象の数は、一次陽子のシミュレーションから期待される誤判定事象数と無矛盾であった。この結果を用いて全粒子スペクトルの内に極高エネルギーガンマ線が占める割合の上限値を得た。これは地表検出器と大気蛍光望遠鏡を用いたハイブリッド法によるものとしては、北半球で初の成果である。 以上の成果を第34回宇宙線国際会議(オランダ、2015年7月)にて発表した。
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