本研究では、ウルツ鉱構造を有するコアシェルナノワイヤの成長技術を確立し、ナノワイヤ発光デバイスへの応用を目的としている。本研究で用いているGaPおよびAlP系材料は、本来発光効率の低い間接遷移型半導体であるが、結晶構造を安定な閃亜鉛鉱構造から準安定なウルツ鉱構造に相転移させることで、発光効率の高い直接遷移型半導体となることが理論的に示されている。本年度では、赤色・黄色・緑色の波長領域にバンドギャップを持つウルツ鉱構造AlInPを結晶構造転写法により作製し、結晶構造・混晶組成・光学特性の評価を行った。以下に具体的な研究実施状況を示す。
1. MOVPE選択成長法によりInP(111)A基板上にウルツ鉱構造を有するInPナノワイヤを形成し、その側面にシェル層としてAlyIn1-yP/AlxIn1-xP/AlyIn1-yPダブルへテロ構造(y>x)を作製した。ダブルへテロ構造の形成は、透過型電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線分析により確認した。本研究では、発光波長を制御するために、AlxIn1-xP成長時におけるAl原料供給比を変化させ複数のサンプルを作製した。 2. X線回折測定を用いて逆格子マッピングを取得しウルツ鉱構造を示す(10-15)反射点を分析することで、AlxIn1-xPの結晶構造を判別するとともに組成および歪みを調べる手法を確立した。その結果、いずれのサンプルにおいても、ウルツ鉱構造AlxIn1-xPはナノワイヤの長手方向に引張り歪みを受けており、その組成は成長時におけるAl原料供給比とほぼ等しいことが明らかになった。 3. カソードルミネッセンス測定によりウルツ鉱構造AlxIn1-xPの発光特性の評価を行った。ウルツ鉱構造AlxIn1-xPの組成比を変化させることで、発光波長を590~750 nmまで制御することに成功し、黄色および赤色発光を実証した。
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