C型肝炎ウイルス(HCV)は高率に2型糖尿病を合併することが知られているが、詳しい発症機序はいまだ明らかではない。これまでHCV蛋白質のNS5Aが、GLUT2プロモーター領域に結合する転写因子HNF-1α蛋白質のライソソーム依存性分解を誘導させ、HNF-1α蛋白質量を著しく減少させることで、GLUT2遺伝子の転写抑制、肝細胞内への糖の取り込みが抑制、さらには高血糖が引き起こされる可能性を示した。 平成27年度は、HCV NS5AによるHNF-1α蛋白質の選択的分解機構について明らかにするために、NS5AとHNF-1α蛋白質の認識機構の同定を行った。NS5AとHNF-1αの相互作用には、NS5Aのdomain Iのaa 121-126とHNF-1α POUs domain(aa 91-181)が重要であることが示唆された。NS5Aのaa 121-126のどのアミノ酸がHNF-1αとの相互作用に重要であるかを検討するために、各アミノ酸をアラニン残基に置換した変異体を作製し、HNF-1αと相互作用を検討した。その結果、NS5A Val121Ala変異でHNF-1αとの相互作用が消失し、さらにNS5AによるHNF-1α蛋白質分解が抑制された。これによりNS5A Val121がNS5AによるHNF-1α蛋白質分解に関与していることが示唆された。 HCV感染によるHNF-1α蛋白質の選択的分解にChaperone-mediated autophagy (CMA)が関与しているかを検討した。CMAに必須である細胞質シャペロンHSC70とHNF-1αの相互作用が確認された。HCV感染細胞にAutophagy阻害剤NH4Clで処理を行ったところ、HCV感染によるHNF-1α蛋白質量の減少が回復した。このことから、HCV感染はCMA pathwayを介してHNF-1α蛋白質分解を誘導する可能性が示された。
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