本年度は、界面活性剤が形成するミセルを鋳型とする有機鋳型法を利用して、メソポーラスカーボンの細孔径制御に取り組んだ。まず、「有機鋳型法」と「溶媒揮発法」を組み合わせ、ミセル相から逆ミセル相への相転移を利用し、細孔径、細孔構造の制御に取り組んだ。この合成では、炭素源となるレゾルシノール-ホルムアルデヒドと、有機鋳型剤となるPluronic F127(poly-(ethylene oxide)106-poly(propylene oxide)70-poly(ethylene oxide)106,PEO106-PPO70-PEO106) をエタノール/水混合溶媒中に溶解させ均一溶液を調製し、この溶媒を揮発させることで有機複合体を調製した。この際、溶媒として用いる水/エタノールの組成を変更して合成した。得られた有機複合体を炭化することで、細孔径を6.8nmから56nmへと幅広い範囲で変化させることに成功した。電子顕微鏡観察の結果、細孔構造が「カーボンが連結した構造」から「細孔が連結した構造」へと変化していることが分かった。この結果から、ミセル構造が逆ミセル相へと変化していると結論づけた。 また、上述の合成法で得られた有機複合体に対して水酸化カリウム処理を行う「直接賦活法」に関する研究に取り組んだ。有機複合体に対する水酸化カリウム量を変更して合成を行った。結果、一定量以上の水酸化カリウムを用いた場合、これまで合成が困難であった2nm程度の細孔径を持つナノポーラスカーボンの合成に成功した。水酸化カリウムの加熱時に生成する水量が影響していると考えている。また、得られたナノポーラスカーボンはアセトン/1-ブタノール/エタノールから成る溶液から1-ブタノールを選択的にかつ高容量で吸着した。吸着材料として有用であることを明らかにした。
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