研究実績の概要 |
本研究は、複数の神経変性疾患に関わるAtaxin-2の生理的機能を解明することを目的とした。昨年度では、PAR-CLIP法を用いてAtaxin-2に結合するRNAを高純度に精製し、Ataxin-2が標的mRNAを安定化に導き、それに対応するタンパク質の合成量を増加させることが分かった。さらに、神経変性疾患で認められる遺伝子変異がAtaxin-2のRNA安定化機能を低下させることも発見し、論文に発表した(Yokoshi et al, Mol Cell, 2014)。本年度は、Ataxin-2がどのようなメカニズムによってmRNAを安定化しているのか、またPolyQ鎖の伸長が本機能を減弱させることによって、どのように神経細胞の変性を誘導するのかについて未解明な部分を明らかにするため研究を進めた。神経細胞特異的なAtaxin-2の標的mRNAを同定するため、マウスの脳組織や神経細胞を用いたCLIP法を試みた。脳組織の必要量、UV照射条件、抗体濃度、免疫沈降効率の向上などの最適化を行い、最終的に最適条件を得ることができた。今後は、Ataxin-2がどのようにRNA分解酵素などが関わる様々なmRNA代謝制御machineryと拮抗してmRNAを安定化に導くのか、mRNAの安定化メカニズムをより詳細に明らかにする。そして、異常伸長したPolyQ鎖が神経細胞または脳組織特異的なmRNAに対して、結合量や動態にどのような影響を与えるのか解析する。
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