研究課題/領域番号 |
14J01461
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上野 遼太 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 脱水素カップリング / 芳香族化合物 / ラジカル反応 / 過酸化物 / アミン / ハロゲン化アリール / 炭素-炭素結合形成反応 / 還元反応 |
研究実績の概要 |
1.脂肪族とベンゼン誘導体の脱水素カップリング反応 脂肪族とアレーンの間の脱水素カップリングは簡便に芳香環上を修飾できる手法であるが,適用できるアレーンは電子豊富なものかピリジン誘導体に限られていた.昨年度は,過酸化物および強塩基を用いることで,これまで適用できなかった無置換あるいは電子求引基を持つベンゼン誘導体のアミドやエーテルとの脱水素カップリングが進行することを見つけた.今年度は,この反応の基質適用範囲の拡大,および反応の鍵中間体であるt-ブトキシラジカルおよびアニオンラジカルの関与を明らかにした. 2.過酸化物を用いる脂肪族アミンのα-アリール化反応 1の反応のような,芳香族へのラジカル種の付加および脱離からなるHomolytic Aromatic Substitution(HAS)は,水素原子が脱離する例がほとんどで,置換の位置選択性が制御できないという問題がある.ハロゲン化アリールを用いてハロゲンを選択的に脱離させれば位置選択性の制御が容易になるが,脱離するハロゲン原子が不安定なため困難である.今回,過酸化物を用いることで,ハロベンゼン誘導体と脂肪族アミンの間でハロゲンの選択的な脱離を伴ったHASが進行し,簡便に脂肪族アミンがα-アリール化されることを見つけた. 3.ハロゲン化アリールのアレーンへの還元反応 ハロゲン化アリールを1電子還元して生じたアニオンラジカル種は,ハロゲン化物イオンの脱離を伴って容易にアリールラジカルとなり,系中の水素原子を引き抜いてアレーンに還元される.そのようなハロゲン化アリールの還元反応はすでに知られていたが,実用的な合成反応としての検討は十分になされていなかった.今回,過酸化物と炭酸セシウム存在下2-プロパノール中で反応させることで,簡便にハロゲン化アリールをアレーンへと還元できることを見つけた.この反応は様々な基質に適用可能である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的としていた脱水素カップリング反応の基質適用範囲を広げることができ,詳細な実験により反応機構を解明できた.以上の結果は国際論文として報告し,国内の学会でも発表できた.また,脱水素カップリング反応の検討で得られたこれらの知見を活かし,アミンのα-アリール化およびハロゲン化アリールの還元反応の開発にも成功し,何れの結果も国内学会で口頭発表するに至った.
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今後の研究の推進方策 |
当初は簡便な芳香環の修飾反応として,脂肪族と芳香族の脱水素カップリング反応の開発を目指していたが,反応の位置選択性を完全に制御できるハロゲン化アリールでの反応を実現できたため,今後はHAS機構を用いたハロゲン化アリールへの脂肪族の導入を検討していく予定である.具体的には,アミンだけでなくアミドやエーテルなどのα-アリール化反応の簡便な反応系の実現を目指す. また,今回のハロゲン化アリールの還元反応以外にも,アニオンラジカルを鍵中間体とする新規な反応の開発を目指したいと考えている.
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