本年度において当該研究者は、二つの研究テーマを遂行し、以下に示す成果をあげた。 1.tert-ブトキシラジカルによって引き起こされるへテロアリールスルホンによるアミドのα-アリール化反応:当該研究者は前年度すでに、ラジカル種の芳香環への付加および脱離からなるHomolytic Aromatic Substitution(HAS)機構による、スルホニルアレーンを用いたアルキルアミンのα-アリール化を報告した。研究者は、このα-アリール化される脂肪族化合物の適用範囲を、アルキルアミドに拡大することを目的として研究を進めた。種々の反応条件を探索したところ、化学量論量のtert-ブトキシラジカル源を用いて、へテロアリールスルホンによるアミドのα-アリール化を達成した。この反応は、生理活性を持つ化合物に多く見られるアゾール環を、アミドの窒素原子の隣の炭素に導入できるので、医薬品の合成探索などに大きく活用できるものといえる。 2.tert-ブトキシラジカルによって引き起こされるハロゲン化アリールによるアルコールのα-アリール化反応:前年度までに、研究者はすでに上記のHAS機構によるハロゲン化アリールを用いたアルキルアミンのα-アリール化を報告していた。基質適用範囲の拡大の検討のなかで、炭酸バリウムを添加剤として用いると、アルコールに対しても同様のα-アリール化反応が進行することをみつけた。本反応は2級および1級のアルコールに適用でき、以前に報告したハロゲン化アリールのアレーンへの還元反応と競合せずにα-アリールアルコールのみが得られる。
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