研究実績の概要 |
平成27年度は、高強度・超短パルス光と物質の相互作用によって起こる極限的な非線形・超高速現象を微視的に理解するための理論的手法の開発、及びその応用を行い、特に次の二つの研究で成果があった。 (i)定量性のある電子ダイナミクス計算手法の開発 これまで高強度・超短パルス光が物質中に誘起する電子ダイナミクスの第一原理計算には、局所密度近似(LDA)汎関数を用いた時間依存密度汎関数理論がよく用いたれてきた。しかしながら、このLDA汎関数は半導体・絶縁体の光学ギャップを過小評価してしまう問題が知られており、定量的に高強度超短パルス光と固体の相互作用を調べることが難しかった。本研究では、最近開発されたmeta-GGA汎関数及びHybrid汎関数をLDA汎関数の代わりに電子ダイナミクス計算に適用することで、光学ギャップの過小評価問題を解決し、定量性のある電子ダイナミクス計算を可能にした。この研究の成果は、論文"Nonlinear electronic excitations in crystalline solids using meta-generalized gradient approximation and hybrid functional in time-dependent density functional theory", J. Chem. Phys. 143, 224116 (2015) としてJournal of Chemical Physics誌から発表されている。
(ii)高強度・超短パルス光が物質中に誘起する非線形電子ダイナミクス この研究では、国外のいくつかの実験グループとの共同研究により、理論と実験の両面から、高強度な光のもとで起こる、物質の光学特性の超高速変化、物質中の非線形分極の実時間ダイナミクス等を調べた。物質中に誘起される非線形分極の実時間ダイナミクス、及びその微視的起源について調べた成果については、論文"Attosecond nonlinear polarization and light-matter energy transfer in solids"として科学誌Natureから出版が予定されている。
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