脳室下帯で産生された新生ニューロンはRMSを移動し嗅球に供給される。本研究では、これまでに多数の孤立した新生ニューロンがRMS周囲に存在することを発見していた。そこで、平成28年度はRMS周囲の新生ニューロンに着目し研究を実施した。まず、免疫組織化学的手法により異なる週齢の野生型マウスの新生ニューロンの分布を調べた。その結果、RMSの構造が大きく変化する生後2-3週齢において、RMSのLateral側に新生ニューロンが多く存在することが明らかになった。そこで次に、若齢マウスにおけるRMS周囲の新生ニューロンの定量的な解析を目指した。すでに確立していた固定脳の透明化手法と2光子顕微鏡法を組み合わせ、新生ニューロンに蛍光タンパク質EGFPを発現する遺伝子組換えマウスの広範囲に渡るRMS全体を血管と共に可視化した。新生ニューロンの分布を調べるため、取得した画像からEGFP陽性細胞の抽出の自動化を試みたが、これまで開発していた手法では成熟した細胞も抽出されるという問題があった。そこで本年度は、EGFP陽性細胞の抽出にテンプレートマッチング法を用いることで、新生ニューロンのより精度の高い解析を実現させた。これにより、若齢マウスのRMS周囲の新生ニューロンはRMSの構造や血管と関連しながら偏在していることをより精度よく示すことができた。また、新生ニューロンの移動方向の推測に向けて、細胞体に対する先導突起の方向を自動で計測する手法を確立した。さらに、形態から移動中と推測した新生ニューロンに対し確立した手法を用いた結果、新生ニューロンは様々な方向に先導突起を伸ばし、特にRMSと平行に伸ばす細胞が多いことを明らかにした。これより、RMS周囲の新生ニューロンは特定の領域には移動せず、RMSと並走するように動いていると推測する。
|