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2015 年度 実績報告書

急速に成長する活動銀河核の探査と構造の理解による巨大ブラックホール形成史の究明

研究課題

研究課題/領域番号 14J01550
研究機関京都大学

研究代表者

川室 太希  京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2014-04-25 – 2017-03-31
キーワード活動銀河核 / X 線 / X 線望遠鏡「すざく」
研究実績の概要

吸収を受けた (水素柱密度 22 <= log N_H < 24) 活動銀河核 (AGN) は、全体の AGN の大部分を占める種族で、その統計的な性質を調べることは、ブラックホール (BH) の成長を理解する上で重要である。そこで、X 線観測衛星「すざく」と Swift/BAT によって 2005-2015 年の間とられた吸収を受けた中高光度 (X 線光度 log L_X > 42) AGN の広帯域 X 線スペクトルの系統的な解析を行った。その結果、以下の 4 つ事実がわかった。1) 冪関数で近似される連続成分の光子指数が、Eddington 比 (BH 質量で規格化した光度) と正の相関を示した。これは、低光度 AGN で見られる負の相関と逆であり、Eddington 比に応じて、降着円盤とコロナの相互作用の関係が変化していることを示唆している。2) AGN 周りに存在するダストトーラス由来と考えられる鉄輝線の AGN 光度に対する相対強度は、光度が高くなるにつれて弱くなる傾向を示した。これは、光度が高くなるにつれて、BH からより遠方までダストが昇華され、立体角が小さくなるダスト後退モデルと矛盾しない。3) 吸収量 (N_H) または、光度 (L_X) でサンプルを二つに分けて硬 X 線スペクトルのスタッキング解析を行い、反射成分の強度を求めた。吸収量が高い、もしくは、光度が低いサンプル程、その強度が強いことを発見した。前者は、視線方向の吸収体が多い程、AGN のトーラス構造の立体角 (= 反射強度が高い) が高くなる傾向があることを示唆する。後者は、ダスト後退モデルと矛盾しない。4) ある AGN 光度に対して散乱光の割合が低い天体ほど、中間赤外線の高階電離輝線 [OIV] の光度が弱くなる傾向を発見した。[OIV] 輝線は、AGN の本来の光度を見積もる手段として用いられてきたが、以上の結果は、散乱体が小さいと、本来の光度が小さく見積もられるバイアスが起こることを示唆する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

前年度から執筆していた低光度 AGN と BH による星の潮汐破壊現象についての論文 2 編をまとめ、欧文雑誌 (APJ, PASJ) に投稿した。その結果、前者については現在、掲載受理された。また、昨年度の研究の推進方策で述べた中高光度 AGN について、その広帯域 X 線スペクトルの系統的解析をし終えた。そして、その活動性 (光度、Eddington 比) と降着円盤やダストトーラス構造との関係性を調査した。以上の結果を論文にまとめ、欧文雑誌に投稿した。加えて、低光度 AGN について、電波干渉計 ALMA への観測提案も行った。当初の予定では、 3 編の論文の掲載受理を目標にしていたが、内 2 編はまだ受理されていないため、「やや遅れている。」と判断した。

今後の研究の推進方策

MAXI が運用を開始してから約 6 年間取りためてきた全天の X 線データを用いて全天カタログを作成する。これは、硬 X 線領域 (> 2 keV) において、過去最高感度のカタログになる予定である。その目標の達成のために、検出器の応答関数の再現性の向上を目指す。予測として、800 もの X 線点源が検出される予定である。カタログが完成された暁には、基本的な統計量である近傍 AGN の光度関数を導出する。また、MAXI よりもより硬い X 線(> 10 keV) の Swift/BAT カタログと比較することで、軟 X 線で明るい天体 (特に本研究の着目天体であった狭輝線 Seyfert 1 型銀河) を効率的に探査していく予定である。そして、種族に絞った光度関数も導出することを考えている。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2015 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)

  • [国際共同研究] Pontificia Universidad Catolica de Chile(Chile)

    • 国名
      チリ
    • 外国機関名
      Pontificia Universidad Catolica de Chile
  • [国際共同研究] Maryland University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Maryland University
  • [学会発表] Study of torus structure of low-luminosity active galactic nuclei with Suzaku2015

    • 著者名/発表者名
      Taiki Kawamuro
    • 学会等名
      Torus 2015: The unification scheme after 30 years
    • 発表場所
      イギリス
    • 年月日
      2015-09-14 – 2015-09-18
    • 国際学会
  • [学会発表] 「すざく」による低光度活動銀河核の広帯域 X 線スペクトルとそのトーラス構造の理解 (II)2015

    • 著者名/発表者名
      川室 太希
    • 学会等名
      日本天文学会 2015 年秋季年会
    • 発表場所
      甲南大学
    • 年月日
      2015-09-09 – 2015-09-11
  • [学会発表] 「すざく」による低光度活動銀河核の広帯域 X 線スペクトルとダストトーラス構造の理解2015

    • 著者名/発表者名
      川室 太希
    • 学会等名
      超巨大ブラックホール降着円盤スヘペクトルの解釈を巡って
    • 発表場所
      JAXA 宇宙科学研究所 (神奈川県相模原市)
    • 年月日
      2015-08-11 – 2015-08-12
  • [学会発表] Study of torus structure of low-luminosity active galactic nuclei with Suzaku2015

    • 著者名/発表者名
      Taiki Kawamuro
    • 学会等名
      East Asia AGN workshop 2015
    • 発表場所
      中国
    • 年月日
      2015-07-14 – 2015-07-16
    • 国際学会

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公開日: 2016-12-27   更新日: 2022-02-03  

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