研究実績の概要 |
吸収によるバイアスが極めて小さい Swift/BAT 硬 X 線天体カタログから、「すざく」で観測された適度に吸収を受けた中高光度活動銀河核 (AGN; 水素柱密度 log N_H = 22-24 cm-2, X 線光度 log L_x > 42 erg s-1) 45 天体と低光度 (log L_x < 42 erg s-1) AGN 10 天体の X 線スペクトルの系統的な解析を行った。「すざく」による統計の良い広帯域 X 線スペクトルによりこれまで以上に X 線での性質に強い制限を与え、それをもとに統計的な議論を行った。結果、中高度で提唱されてきた AGN 構造の光度依存モデルは、低光度になると成り立たなくなり、新しいモードを示すことを発見した。 以上に加えて、全天 X 監視装置 MAXI を用いて、超巨大ブラックホール (SMBH) による星潮汐破壊現象 (TDE) の発生頻度の光度依存性 (光度関数) について観測的に初めて制限を与えた。TDE は、破壊された星が SMBH に降着するまさに SMBH の質量成長の現場であり、現在の宇宙に存在する SMBH 形成に寄与してきたと考えられる。そして、その定量的な議論には、光度関数を観測的に求めることが極めて重要である。そこで、MAXI による 37 ヶ月の全天探査により、突発的に明るくなる現象を系統的に検出し、TDE の観測的特徴を考慮することで、4 例の TDE 候補が MAXI で検出されることを確認した。得られた TDE サンプルを用いて、TDE の光度関数を最尤法により決定した。結果、赤方偏移 z < 1.5 において、TDE による SMBH 質量密度進化への寄与が AGN と比較して極めて小さいことを突き止めた。
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