研究課題
本研究では,新規なシステム構成による光A/D変換の物理的限界を超える高分解能化を目的とする.本年度は,提案する光A/D変換の高サンプリングレート条件下での動作実証,および光A/D変換の性能評価の応用例として用いる予定である光フラクショナルOFDM通信方式の特性評価を行った.得られた成果は以下のとおりである.1,高サンプリングレート条件下での光A/D変換の動作において,個々の光パルスあたりのエネルギーが低くなることにより非線形光学効果の誘起効率の低下が懸念される.実証実験においては,10 GHzサンプリングパルス光源とディレイライン,光カプラーを用いて生成した40 GHzサンプリングパルス列を生成し,光スイッチにより入力アナログ信号の信号長を区切ることで40 GS/s光A/D変換の動作を確認した.シリコン導波路などの高非線形性を有する素子を用いることで連続的な動作が期待される.2,光A/D変換の性能評価の応用例として,光通信分野において受信機の性能に合わせて伝送状態を調整可能な光フラクショナルOFDM方式への接続動作を検討している.光A/D変換を含む受信機の性能に対する光フラクショナルOFDM方式の特性評価を行った.性能の良くない受信機の時間ゲートに対して伝送品質を向上可能なサイクリックプレフィクスの導入を検討し,実験的に品質向上効果を実証した.また,伝送路の特性に合わせて光フラクショナルOFDM信号を生成することで,伝送中の非線形光学効果による信号劣化を低減できることを数値計算により明らかにした.さらに,送信機に空間位相変調器,受信機に平面光導波路を用いた光フラクショナルOFDMの伝送実験を行い,様々な方法で光フラクショナルOFDM信号を生成できることを実証した.
2: おおむね順調に進展している
本年度では,目標としていた100 GS/sのサンプリングレートでの光A/D変換の動作実証には届かなかったものの,これまでの成果の4倍である40 GS/sでの実証に成功している.国際学会で積極的に研究成果を発表し、Best student paper 賞を受賞するなど高い評価を得ている.また,申請研究の応用例である光フラクショナルOFDM伝送方式に対する研究も精力的に取り組んでおり,海外の共同研究者と協同して研究を行い,光通信分野における主要な国際学会で発表を行っている.以上より,おおむね順調に進展していると評価することができる.
次年度は,本年度までの知見を活かし,高サンプリングレート光A/D変換に対して提案手法を用いることで,高サンプリングレートかつ高分解能な光A/D変換の実証を行う.出力信号のアイパターン測定,符号誤り率測定,有効ビット数の算出を行い,システムの定量的な性能評価を行う.さらに,光A/D変換の性能評価の応用例として,光フラクショナルOFDM通信方式との接続実験を検討している.そこで,本年度の光フラクショナルOFDM伝送方式の特性を評価した成果をもとに,提案する光A/D変換を用いた光フラクショナルOFDM信号の受信実験を行い,光A/D変換の性能や光フラクショナルOFDM信号の生成法に対する伝送品質について評価を行っていく予定である.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
IEICE Transactions on Electronics
巻: 98-C ページ: 808-815
http://www-photonics.mls.eng.osaka-u.ac.jp/