研究課題/領域番号 |
14J01599
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
青山 祐介 北海道大学, 工学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 燃料電池 / 水輸送現象 / Cryo-SEM / 固体高分子 / PEFC |
研究実績の概要 |
本研究では固体高分子形燃料電池(PEFC)の構成部材である、微細多孔質層(MPL)内における水輸送機構を解明し、得られた知見から高出力運転に適したMPL構造を提案することを目指す。当該年度では、MPLにおける水輸送のうち、MPLとMPLに隣接して存在する触媒層(CL)の界面に焦点を当て、MPL/CL界面の密着性が界面近傍における生成水分布および発電性能に与える影響を調査した。また、高出力運転に適した次世代のMPL構造を検討するために、MPLの濡れ性と水輸送現象の関係を調べた。得られた成果を以下にまとめる。 1.MPLとCLを一体化したガス拡散電極(GDE)を用いることにより、界面の密着性を向上させた新型膜電極接合体(GDE法MEA)を導入した。一般的な転写法で作製されたMEAと比較すると、GDE法MEAは濃度過電圧の増大を抑制することで、低温や高電流密度域などの高加湿条件において特に発電性能が向上することが判明した。 2.GDE法が発電性能を向上させる要因を特定するために、発電後のMPL/CL界面の液水分布を凍結固定化法とCryo-SEMにより断面観察した。その結果、GDE法によるMPL/CL界面の高密着化は、高出力運転への課題の一つであったガス流路下界面の液水滞留を抑制できることが判明した。また、界面における液水滞留を抑制することで、濃度過電圧の増大を抑制できることが示唆された。 3.従来は疎水性であるMPLを親水性に変更し、MPLの濡れ性が水輸送現象に与える影響を調べた。親水性MPLではMPL内部に多量の氷が存在していることから、親水性MPLはCLから液水の輸送を促進することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Cryo-SEM断面観察と酸素ゲインをはじめとする性能試験により、MPL/CL界面近傍の生成水分布と発電性能の関連性をある程度明らかにし、界面の高密着化が高出力運転に適したMPL構造として有用であることを提示できた。加えて、これらの知見を国内外の学会で発表しており、おおむね順調に研究が進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、水輸送機構の解明と高出力運転に適したMPL構造について検討する計画である。具体的には、MPLを親水化したことで生じる電池内生成水分布および発電性能の変化から、生成水分布と発電性能の関連性を明らかにすることを目指す。また、界面構造、濡れ性、MPL材料など構造や特性の異なるMPLを用いて発電性能試験とCryo-SEM観察を行い、高出力運転に適したMPL構造の提案を目指す。得られた研究成果は、その都度国内外の学会で発表するほか、学術論文誌に投稿する予定である。
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