本研究では、20世紀初頭の英国でのキモノイメージの変容とモダニズムにおける日本文化の再評価との相関を明らかにするため、日本製輸出用キモノの消費の実態を踏まえ、マスメディアにおけるキモノとキモノ姿の女性の描かれ方を分析する。 1、英国内に所蔵されている輸出用キモノとキモノ風衣装の悉皆調査の継続のため、Worthing Museum and Art Gallery及びNational Museum of Scotlandにて収蔵品調査を行い、それぞれ4点と7点の関連収蔵品を精査した。2、新聞・雑誌の戯画に関して、Illustrated London News、Punch、Review of Reviewsを中心に、着物姿の女性の戯画を調査し、日本人女性が国家としての日本を表すことが多く、日露戦争での勝利以降、油断のならない存在として描かれるようになったことがわかった。3、経済史の観点からの日本製絹製品の輸出貿易に関する先行研究をまとめた。4、調査結果を論文化し、ジャポニスム学会誌、大阪大学学内紀要及び英国の学術研究誌への掲載を通じて成果発表を行った。5、国際共同研究ネットワークの構築のため、英国の研究者との研究会議を行った。 初年度は多分野にわたる発表の機会をもち、国内外で成果を広く共有することができたが、2年度目である本年度は、その内容を論文化し、学術誌に発表することで成果の公表を行うことができた。とりわけ、バイリンガル誌である『ジャポニスム研究』と英語のInternational Journal of Fashion Studiesへの採択は、これまで構築してきた国際的な研究のネットワークの中で繰り返し慫慂されてきた英語での論文発表であり、成果の共有という意味だけでなく、今後の国際共同研究計画において自身がどのような貢献ができるのかを対外的に明確にすることにも役立った。
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