脳ネットワークの構造的特徴を無線センサーネットワークの仮想化に応用することに取り組み、これまでは実験的手法、解析的手法によってその有意性を明らかにした。しかし、サービスごとに切りだされた資源をどのように運用するかについて議論する必要がある。そこで、各ユーザーの嗜好や移動に応じた情報拡散方式を提示し、仮想化環境におけるユースケースについて議論した。将来のIoT環境では端末数の増大が課題とされ、モバイル通信端末に加え、ロードサイドユニット(RSU)などの中距離通信を行うための非モバイル通信端末の増加が想定される。端末数の増加とともに通信量の増加が想定されており、様々な情報をいかに無線環境で収容するかが課題となる。この課題を解決するために、時空間を制限した情報配信方法を検討する。ただし、ユーザーによって必要とする情報は異なっており、さらに目的地から離れた場所の情報であればその価値は低くなる。そのため、単純に情報をブロードキャストする方法では効果的な情報配信ができないだけでなく、無線の通信資源を浪費することになる。そこで、中範囲の情報配信を対象に、移流拡散方程式に基づくポテンシャル場を利用した情報配信方式を提案する。提案手法では、ユーザー端末(UD)ごとに受信したい情報の種類とどの方向から受信したいかを移流ベクトル場で制御することを可能とする。提案手法では3種類の座標系を用いている。一つは局所座標系であり、配信情報一つにつき一つの局所的な座標系の中でポテンシャル場を構築する。二つ目は大域座標系であり、局所座標系で構築されたポテンシャル場を重ね合わせ、実際の地図上の位置にマッピングするための座標系である。三つ目はユーザー座標系であり、UDを中心にどの種類の情報がどの方向から来てほしいかを移流ベクトル場で表現する。この座標系によってユーザーの移動目的に応じて情報を誘引することができる。
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