研究課題/領域番号 |
14J01642
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宋 元旭 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | サプライヤーシステム / B2B取引 / メーカー・サプライヤー間協業 |
研究実績の概要 |
今年度は研究課題である「サプライヤーシステム変化に対応するサプライヤーの戦略」に沿って、以下の3つの研究を行いました。 まず、製品開発においてサプライヤーとメーカーの協調に伴う問題の1つである情報の粘着性に関する先行研究の解説論文を書きました。von Hippel(1994)ではメーカーとサプライヤーのうちどれがよりイノベーションに貢献するかを情報の粘着性という概念で説明しております。ただし、その概念の測定が難しく定量分析に困難があることやトートロジーになりやすいことを解説論文で指摘いたしました。その内容は、宋元旭,秋池篤(2014)として掲載されております。 また、携帯電話産業におけるサムスンとノキアのサプライヤーシステムの比較分析を行いました。既存研究では不確実性が高い産業の場合、メーカーとサプライヤーの協調的な関係は効果をもたらさないとされておりました。しかし、我々の分析結果、サムスンとノキアは共にサプライヤーと協調的な関係を結んでいるが、サムスンはよりサプライヤーに対する依存度を低めていて、サプライヤー同士を競争させる傾向があることが確認されました。我々は不確実性が高い産業の場合、メーカーとサプライヤーの協調的な関係は有効であるが、ある程度競争をさせることがより有効であることをこの結果から仮説的に示唆いたしました。私はこの内容を国際ビジネス研究学会の関東部会で発表致しました。 最後に、日本サプライヤーの競争力にカスタマイズ能力および協調がどのような影響を及ぼすかを確認するため、産業横断的なアンケート調査を実施いたしました。その結果、メーカーとサプライヤー間の協調は利益や売り上げには影響しないが、カスタマイズ能力にU字型の影響を及ぼすことが明らかになりました。私はこの内容を基に、2015年3月に開かれたGSCM2015という海外学会で発表致しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DC2の1年目としてもともと計画していたものは、文献のレビューとアンケート調査のプレー調査、新たな調査先の確報でございました。まず、文献のレビューにおいては、LCD産業や携帯電話産業に関わるものではないが、必要とされるvon Hippel(1994)の解説論文を掲載させたことで、ある程度達成できたと思っております。 また、自分の研究に基づき、産業横断的にアンケート調査を実施し、その結果を分析し、海外学会で発表致しました。これは2つ目の計画であった、アンケートのプレー調査にあたり、これも成果を出せたと思っております。 最後に、新たな調査先の確報を計画しておりましたが、最初の目標であった韓国サプライヤーおよびメーカーにはアプローチできませんでした。その代わり、台湾に訪問調査を行い、台湾における日系企業の動きおよび電子部品の取引について把握致しました。その結果、日本、韓国、台湾の3ヶ国における電子機器部品取引までに視野が広がることが出来ました。今後、論文投稿を目指しております。 その他にも、前から研究していた携帯電話産業におけるノキアとサムスンのサプライヤーシステムについて主張をまとめ、国際ビジネス研究学会関東部会で報告致しました。これも電子機器部品取引における新たな視点を提示したことで、コメントを頂き、論文投稿を行っております。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策は概ね変更はございません。 現在共同研究者たちと日系の電子機器部品サプライヤー向けに送るアンケート調査の質問項目を準備しております。今まで方法論において注意されたところもあったため、できるだけ先行研究に基づいた質問項目を、適切な分析方法で分析しようとしております。 また、日本、韓国、台湾での企業訪問調査を行い、国際的な電子機器部品の取引構造を把握することを目指しております。まだ、サプライヤーからの正しい戦略が把握されてないため、もっと広い視野で、企業調査を行いと思っております。
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