今年度は引き続き霊長類へのカルシウムイメージング法適用を目指して実験・解析に取り組んだ.両眼視差についての機能解析には至っていないが,その過程で霊長類視覚皮質V2からの活動記録に成功した. サルV2野におけるカルシウムイメージングでは,自然動画刺激呈示中のサルV2野ニューロンからカルシウムイメージング法による活動記録を行った.カルシウム感受性色素として Cal-520 AM を使用し,アストロサイトマーカとして Sulforhodamine 101 を使用した.結果として,2計測面,127個の細胞の活動記録を行った.両計測面合計で50%以上の細胞 (65個) の細胞が10試行の動画に対し再現性のある応答を示した(説明分散率 0.1 以上) . サルV1/V4野における集団活動と機能構築に関する成果について,実験方法については上項と同様である.解析には2014-2016年に池添貢司博士らと共に行った実験データを使用した.同時計測した細胞について,細胞間距離と細胞ペアの応答類似性である信号相関の間に比較的強い相関が各領野ともに観察された.また,細胞間の信号相関は距離に依らずV1の方が高かった.このことから,V1およびV4において細胞スケールでの異なる機能構築の存在が示された.また,呈示した動画シーンが細胞集団活動から推定出来るか,判別分析による解析を進行中である.すでにチャンスレベルよりも高い確率で,呈示された動画シーンを判別できる事を確認済した. また今年度は,内因性光学信号計測法について導入を進めた.Labview により記録用アプリケーションを開発し,実際にラットおよびサル視覚皮質で刺激依存性の信号変化検出に成功している.今後は上記手法と組み合わせて,異なるスケールの機能構築に着目した実験解析を取り入れていく予定である.
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