研究課題/領域番号 |
14J01668
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高橋 昂輝 日本大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
キーワード | 北米 / トロント / ポルトガル / アゾレス諸島 / 業務改善自治地区 / BID / ローカルガバナンス / エスニックブランディング |
研究実績の概要 |
本年度は,前年度と同様にカナダ・トロントでの調査を実施しつつ,ポルトガルでのフィールドワークも遂行した。トロントでは昨年に引き続き,6月にリトルポルトガルで催される2つのフェスティバルを調査した。他方,4~5月には約3週間をかけ,ポルトガル本土の都市や農村のほか,Azores(アゾレス)諸島,Madeira島なども踏査した。調査の結果,トロントに最も多くの移民を送り出したアゾレス諸島において,北米都市とのつながりが多様な形態で確認された。例えば,①アゾレス諸島出身者で若年期にトロントへ移住したものの,その後,ポルトガル国内の政治・経済状況が安定したために島へ帰還したもの,②トロントとアゾレス諸島の両方に自宅を所有しており,季節に応じて二地域に居住するものなどが確認された。 平成27年度は,国際学会と国内学会においてそれぞれ1回の研究発表をおこなった。8月にロシア・モスクワでおこなわれた,International Geographical Union Regional Conferneceでは,”Changing ethnic neighborhood and social relations among local entrepreneurs in Toronto’s Little Portugal”の論題で口頭発表をおこなった。また,11月の日本大学地理学会秋季学術大会では,北米都市の業務改善自治地区(Business Improvement District)の展開:発祥の地トロントにみるローカルガバナンスとエスニックブランディングを口頭で発表し,日本大学地理学科同窓会特別賞(大学院生部門)を受賞した。また,本年度は合計3編の論文が受理された。このうち1編は,Geographical Review of Japan Series Bに既に掲載されている。残る2編は,それぞれ地理空間とUrban Geographyに掲載予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の最終目的であった,リトルポルトガルにおける経営者間の社会関係分析を昨年度に完了し,その成果を論文として,本年度に国際学術雑誌”Urban Geography”に投稿し,受理されたことは本研究が計画以上に進展していることを示す。また,業務改善自治地区BID(Business Improvement District)に関する研究も,本年度,学術雑誌”地理空間”に投稿し,論文の掲載が受理された。Geographical Review of Japan Series Bにおいては,ポルトガル系コミュニティの空間構造に関する論考が受理・掲載された。さらに,昨年度に着手した,移民エスニック集団の居住パターンの変化と選挙に関する研究に関しても,順調に分析が進んでいる。くわえて,本年度は,発着地間における移民のトランスナショナリティについても研究の構想が進展した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年にあたる来年度は,4~7月の約3か月半の間,カナダにおいて調査・研究を遂行する予定である。長期の現地調査を通じて,現在進行中および構想段階にある研究(①ホスト社会における移民エスニック集団の政治参画,②ポルトガル系移民一世の二地域居住)を完了させ,トロントにおけるポルトガル系コミュニティを取り巻く都市空間の変容過程を,エスニック集団とホスト社会の両方の視座から検討し,明らかにする。
|