本年度は,4月上旬から7月下旬までの約3ヶ月半の間,カナダに滞在し,調査研究をおこなった。この間,現地研究者が主導する日系移民と戦時中の強制収容に関する研究プロジェクトに招待を受け,カナダ西海岸において研究集会,ワークショップなどにも参加した。 ハリファックスで開催された,カナダ地理学会年次大会では,日本国内の地域の事例として,奄美大島における移住者の増加とそれに伴う地域変容について発表をおこなった。また,歴史地理学会大会において,シカゴの移民博物館とバージェスの都市モデルに関する研究を発表した。このように,トロントのポルトガル系コミュニティのみならず,日本国内の地域やアメリカ合衆国の都市,さらにはカナダ西海岸の他のエスニック集団の事例についても並行して研究を進めることにより,幅広い視点で移民と地域との関係を議論する視点を養うことができた。 トロントにおいては,約1ヶ月間のフィールドワークを遂行した。近年,高齢化している移民一世を対象に聞き取りと質問票調査を実施し,トロントとポルトガルにおける二地域居住の実態を検討した。その成果は,日本地理学会秋季学術大会において報告した。また,日本大学地理学会秋季学術大会では,「トロントにおける選挙と移民街の変化」を発表し,日本大学地理学会同窓会特別賞(大学院生部門)を受賞した。さらに,日本地理学会春季学術大会においては,「トロントにおける業務改善自治地区BIAとエスニックネイバーフッド」を報告した。 研究論文に関しては,「北米都市の業務改善自治地区BID」が地理空間9(1)に,「バージェス時代の多民族都市シカゴを記憶する移民博物館」が歴史地理学58(4)に,“Toronto's Little Portugal”が Urban Geography38(4)にそれぞれ掲載された。これらはすべて査読付きの学術雑誌である。
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