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2015 年度 実績報告書

モデル線虫を用いた昆虫病原性線虫の共生細菌が発揮する病原性の解析

研究課題

研究課題/領域番号 14J01687
研究機関鹿児島大学

研究代表者

佐藤 一輝  鹿児島大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2014-04-25 – 2017-03-31
キーワード昆虫病原性細菌 / Photorhabdus luminescens / Caenorhabditis elegans / 病原性変異株 / ビタミンB6 / 昆虫病原性線虫
研究実績の概要

今年度は、Caenorhabditis elegansを用いた病原性スクリーニングによって単離したPhotorhabdus luminescensの病原性変異株のうち、pdxB遺伝子変異株(以下、pdxB::Tn5)について詳細な表現型解析を行なった。相補性試験の結果から、病原性の減衰はpdxB遺伝子の欠損によるものであることが確認され、加えて、pdxB遺伝子の欠損は貧栄養培地での増殖力の減衰も引き起こしていることが明らかになった。他種の細菌を用いた先行研究からpdxB遺伝子はビタミンB6の新規生合成経路に必須な遺伝子であることが推測された。そこで活性型ビタミンB6であるpyridoxal 5’-phosphate(PLP)を貧栄養培地に複数の濃度で添加したところ、増殖力は濃度依存的に向上し、10μMのPLP添加で野生型と同程度の増殖が確認された。したがって、pdxB::Tn5ではビタミンB6の新規合成を行うことができないために貧栄養培地での増殖力が低下していることが示された。また、PLPの前駆体である他種のビタミンB6類を添加した貧栄養培地でpdxB::Tn5を培養した場合でも野生型と同程度の増殖が確認された。したがって、P. luminescensは新規合成経路とともにsalvage pathwayというPLPの前駆体であるビタミンB6類を介した経路によっても、PLPの合成を行なっていることが予想された.さらに、PLPを添加した培地でC. elegans幼虫に対するpdxB::Tn5の病原性の評価を行った。PLPの添加を行ったpdxB::Tn5では野生型株と同等の発育阻害効果を示したことから、pdxB::Tn5ではビタミンB6の新規合成を行うことができないためにC. elegansに対する病原性が低下していることが示された。加えて、pdxB::Tn5では野生型株に比べてジャイアントミールワーム(Zophobas morio)に対する致死効果が低下していることが確認され、ビタミンB6の新規生合成経路は殺昆虫活性にも関与していることが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

従来の予定よりも早く、C. elegansを用いた昆虫病原性細菌P. luminescensの病原性変異株スクリーニングで得たpdxB遺伝子変異株の詳細な表現型解析をおこなうことができたため。また、その結果、ビタミンB6が線虫・昆虫の両者に対する病原性の発揮に重要な物質であることを突き止めることができ、本方法が新規病原性因子の探索に有効な手段であることを示すことができたため。一方で、C. elegans耐性変異体の作出については、様々な代替案の実施を検討しながら進めているため、総合的にはおおむね順調に進展している、と判断した。

今後の研究の推進方策

今後は、もう一方のP. luminescensの病原性変異株についても詳細な解析を進めていく予定である。この株は機能未知な遺伝子に起きた変異が病原性に影響を及ぼしていることが予想されるため、様々なアプローチで原因遺伝子が病原性において果たす役割を明らかにしていく予定である。同様にP. luminescensに対するC. elegansの耐性変異株についても様々な手法検討を続けていく予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Involvement of vitamin B6 biosynthesis pathways in their insecticidal activity of Photorhabdus luminescens.2016

    • 著者名/発表者名
      Sato, K., Yoshiga, T., Hasegawa, K.
    • 雑誌名

      Applied and Environmental Microbiology

      巻: 未確定 ページ: 未確定

    • DOI

      -

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 昆虫病原性線虫とその共生細菌が有する病原性と共生のメカニズム2016

    • 著者名/発表者名
      佐藤一輝,吉賀豊司,長谷川浩一
    • 雑誌名

      中部大学 生物機能開発研究所紀要

      巻: 16 ページ: 未確定

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 昆虫病原性細菌Photorhabdus luminescensのビタミンB6生合成経路が病原性に及ぼす影響2016

    • 著者名/発表者名
      佐藤一輝,吉賀豊司,長谷川浩一.
    • 学会等名
      日本昆虫学会第76回大会・第60回日本応用動物昆虫学会大会合同大会.
    • 発表場所
      大阪府立大学中百舌鳥キャンパス (大阪府堺市)
    • 年月日
      2016-03-27
  • [学会発表] 昆虫病原性線虫Heterorhabditis bacteriophoraの有する殺ゴキブリ活性評価2015

    • 著者名/発表者名
      小澤壮太,佐藤一輝,山下雄司,長谷川浩一
    • 学会等名
      第31回日本ペストロジー学会
    • 発表場所
      仙台市情報・産業プラザ (宮城県仙台市)
    • 年月日
      2015-11-12
  • [学会発表] Insecticidal activity of the entomopathogenic nematode Heterorhabditis bacteriophora against three Periplaneta cockroaches2015

    • 著者名/発表者名
      Hamaguchi, T., Sato, K., Yamashita, Y., Ozawa, S., Yoshiga, T., Hasegawa, K.
    • 学会等名
      日本線虫学会第23回大会
    • 発表場所
      中部大学 三浦記念会館 (愛知県名古屋市)
    • 年月日
      2015-09-03
  • [学会発表] Phenotypic analysis in attenuated virulence mutant of Photorhabdus luminescens2015

    • 著者名/発表者名
      Sato, K., Yoshiga, T., Hasegawa, K.
    • 学会等名
      日本線虫学会第23回大会
    • 発表場所
      中部大学 三浦記念会館 (愛知県名古屋市)
    • 年月日
      2015-09-02
  • [学会発表] Screening and identification of Photorhabdus luminescens virulence-related genes using C. elegans as a model host2015

    • 著者名/発表者名
      Sato, K., Yoshiga, T., Hasegawa, K.
    • 学会等名
      20th International C. elegans Meeting
    • 発表場所
      カルフォルニア大学ロサンゼルス校 (アメリカ合衆国ロサンゼルス市)
    • 年月日
      2015-06-26
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2016-12-27  

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