研究課題
本研究では、未だ単離された報告の無いミュオン原子を単離し、その化学反応を観察することで、化学種としてのミュオン原子の可能性を切り開くことを目的にしている。そのために、本研究では、1)PTFEターゲットでのミュオン原子生成、2)電磁相互作用によるミュオン原子の分離、3)分離後のミュオン原子ビームの強度確認、4)気体固化ターゲットでのミュオン原子ビーム生成、5)ミュオン原子ビームの利用と順を追って研究を進めていく。平成26年度は、PTFEターゲットからミュオン原子を生成し、2段加速式TOF型質量分析計 [W.C. Wiley, I.H. Mclaren, The Review of Scientific Instruments 26 (1955) 1150] の原理を用いてミュオンF原子イオンを単離する装置の開発を行った。装置は主に、真空チェンバー、ミュオン原子イオン発生用ターゲットおよび加速用電極、検出器(マイクロチャネルプレート)の3つから成る。3月現在、加速器実験に向けて、装置全体、そして実験条件の調整を行っている。また、同じ3月には、原子力機構が開発した粒子輸送シミュレーションPHITSの講習を受講した。次年度は実機での調整に加えシミュレーションによる条件探索も実施していく。平成26年度、加速器施設J-PARCに本装置を用いた実験のプロポーザルを提出し、2日間のビームタイムを許可された。平成27年度前半に加速器実験を行い、上記項目の1~3までを確認する予定である。研究実務以外では、投稿論文が1件受理された。また、学会発表を3件(国内学会1件、国際学会2件)行った。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度は、ミュオン原子を単離する装置を完成させることを目標に装置設計・試作を行い、概ね予定通りに遂行できた。真空容器の圧力は実測で0.0001Pa台まで到達し、ミュオン原子によるTOF実験ができる圧力であることが確認できた。また、加速電極の電圧は10kVまで絶縁破壊を起こすことなく印加でき、ミュオンF原子イオンの加速に必要な電圧が印加できることが確認できた。加速器実験は実施できていないが、平成27年度のJ-PARC実験プロポーザルは受理されており、年内に1回目の実験を行う予定である。
平成27年度は、1回目の加速器実験、そして、後半には2回目の加速器実験を予定している。現在行っている装置の調整は1回目の実験までに終了する予定である。7月にはスペインで開催される国際学会ICPEAC2015にて発表を1件行う予定である。その他、国内でも学会発表を2件予定している。また、主に加速器実験で得られた結果をまとめ、本年度中に論文として投稿する予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry
巻: 303 ページ: 1277-1281
10.1007/s10967-014-3602-3