研究課題/領域番号 |
14J01748
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
張 子見 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | ホットパーティクル / 環境試料採取 / 福島第一原子力事故 / 土壌試料 / 大気粉塵試料 / 微量元素分析 / 地球化学 / 分析化学 |
研究実績の概要 |
福島第一原子力発電所の事故により環境中に放出された放射性物質のなかには水や酸に溶けない組成のものがある。チェルノブイリ原子力事故時は「ホットパーティクル(HP)」と呼ばれ、今回の事故では気象研究所のグループにより「セシウムボール」と名づけられている。HPはその頑強な性質ゆえに、現在も事故当時の組成を保っていると考えられる。それゆえ、HPの元素組成等を分析することで、事故時の炉内の様子などの情報を得ることができ、今後の廃炉措置を行う際の基本的な情報を得られる可能性が高い。HPを分析するためには、まず環境試料から取り出さなければならない。昨年度の計画では、福島県にて土壌試料を採取し、HPがどのような部分に多く含まれているか、といった基礎的な情報を得ることを計画していた。 実際に昨年度は、福島県飯館村に出向いて土壌試料を採取した。採取地点は、事故当時に放射性物質を含む気団の直撃を受けたと思われる防風林の土壌を採取した。防風林の際の線量が最も高く、林の中へ入っていくほど線量は低くなっていき、事故当時に防風林が放射性の気団を一方向から受け止めていたことが予想できる。その際の土壌からHPの回収が期待できる。 採取された土壌は大阪大学にて放射能濃度を計測後に、化学処理を行うための前処理を行っている段階である。HPを取り出すためにはイメージングプレートによって放射線像を撮り、放射能が特別高い点を見つけて、サンプルからその箇所を切り出す操作を繰り返すことで取り出す。しかし、サンプル全体の放射能が高いと放射線像全体がぼやけるため、HPの位置を特定できなくなる。そこで、HPが水や酸に溶けない性質を利用して、酸処理によってHP以外の放射能を取り除いている最中である。 その他、気象研究所と理化学研究所から事故直後に採取された大気粉塵試料を入手し、その中に含まれるHPの回収も並行して行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の計画は土壌試料の入手とその前処理であるが、飯館村への土壌試料採取および大阪大学における酸処理と、いずれもおおむね計画通りに遂行している。加えて、本来は計画にはなかった事故直後に採取された大気粉塵試料を入手した。大気粉塵試料は前処理を必要とせず、そのままイメージングプレートをとることでHPの位置を特定できる。現在は、大気粉塵試料からのHPの回収に着手しており、来年度の初旬にはHPを取り出すことが可能となる状況まで研究が進んでいる。すなわち、非破壊分析に早くも着手することができるうえ、最終目標としていた破壊分析によるSr-90を行う目途が経ったといえる。 そして幸運なことにより、HPの特定・分析に必要なマイクロマニピュレーターと電子顕微鏡を、本来は他の研究所ののもを借りる算段が、大阪大学で一通りそろえることができた。これを実際に使用したHP探索のテスト実験もすでに始めており、HPサンプルの前処理を終え次第、すぐに分析に着手できる環境を揃えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、前処理が簡単な大気粉塵試料からのHP取出しを成功させることを目標にする。取り出したのちに、X線元素分析によりHPの元素組成を定性的に求めて、先行研究で得られた結果と照合する。そして、先行研究ではなされなかった破壊分析によるSr-90放射能の定量を行うことを当面の目標とする。 上記の実験と並行して、土壌試料については、酸処理によってHP以外の水溶性の放射能を除いたのちに、大気粉塵試料と同様な手順でHPを探していく。統計的な議論のために、できるだけHPを取り出して非破壊・破壊分析を行ってデータを出していく所存である。
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