研究課題
本研究は、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた高圧下での金属融体密度の測定手法を確立し、鉄融体をはじめとする金属融体の密度を数十GPaまでの高圧領域において測定することで、液体として存在する地球外核組成の推定を行うことを目的としている。当該年度は、高エネルギー加速器研究機構のビームラインAR-NE1AにおいてDACを用いたX線イメージング吸収法による密度測定の最適化を行った。圧力発生にはレバー型DACを用い、試料は低融点金属であるインジウムを採用した。また、試料セルにはShen et al. (2002)と同様にレニウムをガスケットとして用い、塩化ナトリウムを標準試料として同一セル内に配置した。高温発生にはニクロム抵抗ヒーターを用いた外熱法を採用し、K型熱電対により測温を行った。実験は3.5-5.3 GPa、300-670 Kの圧力温度条件で行った。X線は入射エネルギーが29.7 keVの単色光を使用し、試料からの透過X線をYAG:Ce蛍光板で可視化したものをCCDカメラに導入することでイメージとして取得した。試料密度は、測定したイメージの輝度コントラストから試料のX線透過度を測ることで、ランベルト・ベールの式に基づくX線吸収法により求めた。また、イメージングプレート検出器を用いた回折X線測定も行い、イメージング測定から求めた密度を固体試料の回折X線から求めた密度と比較することにより測定精度の評価も行った。X線イメージング測定により得られたインジウムの密度は5.34(4) GPa、422(1) Kの圧力温度条件において8.1(6) g/cm3と求められた。これはX線回折から求めたインジウムの密度と誤差の範囲内で一致した結果となった。誤差が比較的大きく精度の点では不十分であるものの、高温高圧下におけるX線イメージ測定による密度測定を実施することが可能となった。今後は検出器の階調や解像度の最適化を行うことで測定精度の向上を行い、液体試料の測定を目指す。
2: おおむね順調に進展している
固体試料ではあるが、DACを用いたX線吸収法による高温高圧下での金属密度の測定を確立したため。
DACを用いたX線吸収法による金属密度測定は実施できたが、その測定精度は十分とは言えない。この問題については、さらに試料や圧媒体のサイズや形状の最適化を行うとともに、CCDカメラによるイメージ測定条件や検出器自体の最適化より改善を試みる。また、加熱に関しても外熱ヒーターにおける抵抗コイルや、断熱材料の変更を行うことにより、ヒーターの使用限度及び断熱性を向上させ、高温下でも安定した加熱を行えるよう改良する。以上の改良点を踏まえて今後、液体金属の密度測定を実現することを目指す。
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