研究課題
本研究は、高圧下での金属融体の密度測定において、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた新たな測定手法を確立することにより、主に鉄融体から成る地球外核組成の推定に欠かせない数十GPaまでの高圧領域における金属融体密度測定を行うことを目的としている。当該年度は、昨年度より引き続き高エネルギー加速器研究機構のビームラインAR-NE1AにおいてDACを用いたX線イメージング吸収法による密度測定の最適化を行った。圧力発生にはレバー型DACを用い、試料は低融点金属であるインジウムを用いた。また、試料セルには試料室として三つの穴を空けたレニウムをガスケットとして用い、圧力標準物質および密度標準物質として塩化ナトリウム、硫化鉄(II)を同一セル内に配置した。高温発生にはニクロム抵抗ヒーターまたはプラチナ-ロジウム抵抗ヒーターを用いた外熱法を採用し、K型熱電対により測温を行った。実験は、8 GPa、647 Kまでの圧力温度条件で行った。X線は入射エネルギーが30 keVの単色光を使用し、試料からの透過X線をYAG:Ce蛍光板で可視化したものをCCDカメラに導入することでイメージとして取得した。試料密度は、測定したイメージの輝度コントラストから試料のX線透過度を測ることで、ランベルト・ベールの式に基づくX線吸収法により求めた。また、イメージングプレート検出器を用いた回折X線測定も行い、イメージング測定から求めた密度を固体試料の回折X線から求めた密度と比較することにより測定精度の評価も行った。X線イメージから得られたインジウムの密度は、約3.7%の誤差があるものの、X線回折実験から得られた密度と比較すると1.3%の範囲内で一致した結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
インジウムの固体、及び高温高圧下で融体にした試料に対して密度の計算を行い、その結果を評価した。その結果、X回折から決まる固体の密度と比べ、1%程度の確度で短時間の測定が可能であることが分かり、今後、更なる精度向上や短時間取得が期待できるため。
X線イメージから求めた密度の誤差は主に使用したCCDカメラのダイナミックレンジ(8 bit)に起因するものと考えられる。この問題については高いダイナミックレンジ(16 bit)を持つ高感度CMOSカメラの使用により改善することを期待しており、現在既にCMOSカメラによる測定テストを行い、透過X線に対するリニアリティ等の測定検出の評価を終えている。今後CMOSカメラを用いるとともに、さらに密度標準物質の最適化を行うことで測定精度を向上させ、さらなる高圧下での金属融体の密度測定を実現することを目指す。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件)
SPring-8/SACLA Research Report
巻: Volume 4 No.1 ページ: 53-57
Physics and Chemistry of Minerals
巻: Volume 43 ページ: 229-236
10.1007/s00269-015-0789-y