研究課題/領域番号 |
14J01804
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 啓太 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | スピントロニクス / 窒化物 / 強磁性体 / 分子線エピタキシー / メスバウアー測定 |
研究実績の概要 |
Si(001)と格子整合する新たなスピントロニクス応用材料として、CoxFe4-xNとCoxMn4-xNに注目している。本年度は、分子線エピタキシー(MBE)法により、SrTiO3(001)基板上に高品質なCoxFe4-xNおよびCoxMn4-xN薄膜の作製を試み、それらの基礎物性を評価した。 MBE法によりエピタキシャル成長したFe4N、CoFe3N、Co3FeN薄膜に対し、メスバウアー測定を行った結果、原子配列の不規則性の存在が示唆された。X線回折(XRD)測定から得られた基本反射及び規則反射の回折強度比から求めた原子配列の規則度も、中程度の値となった。大きなスピン分極率が期待される、規則度が高いCoxFe4-xN薄膜を作製するためには、Nの供給量の調整やポストアニールの導入等による成長条件の改善が必要と判明した。 さらに、MBE法により成長したCoxMn4-xN薄膜の反射高速電子線回折およびXRD測定の結果から、Mn4NやCo4Nに近い組成の試料では高品質なCoxMn4-xN薄膜のエピタキシャル成長に成功したが、Mn4NとCo4Nの中間の組成付近では結晶性が悪化することがわかった。いずれの試料も膜面内方向の格子定数(a)が面直方向の格子定数(c)よりも大きくなり、膜面内方向に引張り歪みが生じた(c/a=0.98~0.99)。磁化曲線の測定から、x<1.0の試料では垂直磁気異方性(PMA)が発現する一方で、x>1.0の試料は面内磁化膜になることがわかった。xに対する飽和磁化(MS)の変化の傾向は、実験と第一原理計算でおおむね一致した。しかし、MSの温度依存性の測定結果から、膜中に不均一な磁気構造の存在が示唆された。Mn4NとCo4Nの混晶化の確認等を行ない、磁気構造の不均一性の起源の解明が必要と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度に行った一連の物性評価により、CoxFe4-xNおよびCoxMn4-xN薄膜の結晶性及び磁気特性についての課題が明らかとなった。また、Si基板上への展開に向けた、Si/絶縁体ヘテロ構造の作製に関する大きな進捗は得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、CoxFe4-xNおよびCoxMn4-xN薄膜の作製条件の最適化を行い、原子配列の規則度および磁気特性の向上を行う。さらに、Si(001)基板上に絶縁体材料をエピタキシャル成長し、その上への強磁性窒化物材料のエピタキシャル成長を実現し、Si基板上へのスピントロニクスデバイスの作製への足掛かりとする。
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