研究課題
NixFe4-xNについて、昨年度の研究においてx = 3にて高い負のスピン分極率(-0.86)が第一原理計算から予想された。また、固体Fe、Niと高周波プラズマN2の同時供給による分子線エピタキシー(MBE)法により、SrTiO3(001)基板上にエピタキシャル成長したNi3FeN薄膜ではキュリー温度が266 Kとなり、粉末試料の報告例とよく一致した。一方でこれは、反応性スパッタ法で作製されたNi3FeN薄膜における、室温で6%の正の異方性磁気抵抗(AMR)効果の観測報告例とは相反する実験結果である。そこで、MBE法により作製したエピタキシャルNiFe3NおよびNi3FeN薄膜のAMR効果を測定し、その発現温度と符号を検証した。膜厚50 nmのNiFe3NおよびNi3FeN薄膜を、[100]が長手方向の幅0.2 mmのホールバー形状に加工し、測定温度5-300 Kの範囲で、外部磁場30 kOe、直流電流0.2 mAのもとでAMR効果を測定した。結果、Ni3FeN薄膜の室温におけるAMR比はほぼ0であり、スパッタ膜の報告とは異なる結果となった。また、双方の試料で広い温度範囲で負のAMR効果が観測された。室温における大きな正のAMR効果は、Ni3Feの特徴と一致することから、過去の報告例のNi3FeN薄膜については、N抜けが示唆される。Kokadoらの理論によれば、負のAMR効果はs↑→d↑またはs↓→d↓のs-d散乱機構で説明される。第一原理計算の結果、NiFe3NおよびNi3FeNのフェルミ準位における状態密度は3d少数スピンが支配的であるため、これらの負のAMR効果はs↓→d↓の散乱機構に起因する。したがって、NiFe3NとNi3FeNについても、Fe4Nと同様に少数スピン伝導が優勢であり、シリコンとの格子不整合率が小さい少数スピン伝導強磁性体材料を新たに発見した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Crystal Growth
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10.1016/j.jcrysgro.2016.11.048
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http://www.researcherid.com/rid/D-3805-2016