研究課題/領域番号 |
14J01811
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松岡 健太 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 巨大ブラックホール / 銀河 / 共進化 / 活動銀河核 |
研究実績の概要 |
銀河はその中心に太陽のおよそ1億倍もの質量を持つ巨大ブラックホールを孕んでいる。この巨大ブラックホールと銀河質量の間には明瞭な相関があることが、近年の観測的研究によって明らかにされてきた。これは、銀河進化と巨大ブラックホール成長の間に密接な相互関係があったことを示す重要な証拠である(銀河と巨大ブラックホールの共進化)。しかしながら、この共進化が宇宙の歴史の中でどのように進んできたのかという点に関しては未だ確固たる結論が得られていない。そこで私は銀河と巨大ブラックホールの共進化の謎に迫るために、平成27年度において以下の研究計画を実施した。
合体直後の段階に見られるような大量のガスや塵を含む銀河の中において巨大ブラックホールは急成長するであろうことが言われている。このようなガスや塵は銀河における星形成も促すことから銀河進化の観点からも非常に有用な段階であることが期待される。そこで私はガスや塵に埋もれた巨大ブラックホールの成長を調べるために、平成27年度において埋もれた活動銀河核天体ULIRG(Ultra-Luminous Infra-Red Galaxies)に着目した。ULIRGはガスや塵に埋もれている活動中(周辺ガスの質量降着によって明るく輝く成長段階)、すなわち成長中の巨大ブラックホールを持つと考えられているが、一般的にガスや塵の吸収によってその中心ブラックホールにおける活動性を捉えることは困難である。この問題を解決するために、私は透過力に優れたX線を用いることで埋もれた巨大ブラックホールの成長を捉えることにした。X線宇宙望遠鏡NuSTARによって得られたULIRGの高エネルギーX線光度と周りの星形成を起源とする赤外線光度の関係を調べたところ、埋もれた巨大ブラックホール成長と周辺の星形成活動の間には正の相関があることがわかった。この研究成果は、現在論文投稿に向けて準備中である("The Astrophysical Journal")。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画ではX線宇宙望遠鏡"Astro-H (HITOMI)"による埋もれた巨大ブラックホールと銀河の共進化に関する研究を予定していたが、2016年2月17日の打ち上げからおよそ1ヶ月という短いオペレーションの後、制御不能となったため本研究に繋がる観測は不可能となった。しかしながら、既存のX線天文衛星(NuSTARやChandra)によって撮られたデータを用いることで、滞りなく本研究課題を進めることができたことから"おおむね順調に進展している。"と評した。
平成26年度に実施した近傍活動銀河核における巨大ブラックホール活動と星形成活動の関係に関する研究成果を論文("The Astrophysical Journal")として発表した事も、本研究課題が円滑に進められていると評価した理由のひとつである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題における今後の推進方策としては、まずX線望遠鏡NuSTARを用いた活動銀河核天体ULIRGにおける隠された巨大ブラックホール成長と銀河進化の関係に関する研究成果を論文として発表する。次にX線天文衛星Chandraを用いたX線スタッキング解析による、静穏銀河における巨大ブラックホール活動性の調査を展開していく予定である。また、ULIRGの化学組成診断を行うことによって銀河進化と巨大ブラックホール成長の関係に迫る研究も同時に進行していく。さらに、巨大ブラックホールの活動が銀河の星形成をコントロールしているという観点から以下の計画も進めていく。電波ジェットを放出している活動銀河核天体に着目することで、ジェットによって誘発された星形成領域の調査を行う。本計画ではALMAを用いた電波観測によって行う予定であり、現在観測提案書を提出中である。この電波観測によって、銀河進化と巨大ブラックホール成長の直接的な相互作用が明らかになると期待される。以上の研究によって得られる成果は査読論文として、また国際会議などで発表する予定である。
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