宇宙の基本構成要素の一つである銀河は、その中心に太陽のおよそ1億倍もの質量を伴う巨大ブラックホール(SMBH)を持つことが知られている。これまでの研究によって、このSMBHと銀河の質量の間には明瞭な正の相関があることが明らかとなった。この観測結果は、銀河進化とSMBH成長の間に密接な相互関係があったことを示す重要な証拠である(銀河とSMBHの共進化)。しかしながら、この共進化が宇宙の歴史の中でどのように遂げられてきたのかという問題は未だ解決していない。そこで私は銀河とSMBHの共進化の謎に迫るために、平成28年度に以下の研究計画を実施した。 銀河同士の合体直後の段階に見られるような大量のガスや塵を含む銀河の中では、SMBHが急激に成長していることが期待される。このようなガスや塵に包まれた段階は銀河自体の星形成活動も促すことから、銀河進化という観点からも非常に注目すべきである。そこで私はガスや塵に埋もれたSMBHの成長および銀河の星形成活動を調べるために、活動銀河核天体ULIRG(Ultra-Luminous Infra-Red Galaxy)に着目した。ULIRGはガスや塵に埋もれた急成長中、すなわち活動的なSMBHを持つと考えられているが(ガスがSMBHへ降着することによって非常に明るく輝く)、一般的に可視光観測ではガスや塵に覆われている中心の活動性を捉えることは困難である。この問題を解決するために、私は透過力の優れた硬X線を用いることでSMBHの成長を捉えることにした。硬X線宇宙望遠鏡NuSTARによって得られたULIRGの高エネルギーX線光度と周りの星形成を期限とする遠赤外線光度の関係を調べたところ、埋もれたSMBHの成長と周辺の星形成活動の間には正の相関があることがわかった。この研究成果は論文誌"The Astrophysical Journal"にて公表済みである。
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