研究課題/領域番号 |
14J01818
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中川 岳 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 不揮発性メモリ / メモリ管理 / プログラミング言語処理系 / ごみ集め / オペレーティングシステム |
研究実績の概要 |
研究の初年度として,本年度は「(1)不揮発性メモリを考慮したプログラミング言語処理系におけるメモリ管理手法の設計および実装」,「(2)提案したメモリ管理手法の改善」の2つの課題に取り組んだ. (1)本研究が想定する不揮発性メインメモリは,書き込みアクセス特性が異なる2つのメモリ素子を組み合わせて1つの主記憶を構成する.そのため,このメモリ空間を管理するためには,データの書き込みアクセス頻度に基づいたデータ配置の決定および配置の管理が必要である.これを実現するために,プログラミング言語処理系の持つごみ集め処理を応用してデータの書き込み特性を収集し,それに基づいてデータ配置を決定する手法を設計した.またその手法をJava言語処理系であるJikes RVMへの実装することを試みた.その内容については,査読付き国際会議"IEEE Symposium on Low-Power and High-Speed Chips"において研究発表を行った. (2)設計および実装を行ったプログラミング言語処理系を用いて,様々なワークロード対象に提案手法の評価を行ったところ,「提案手法を実装することで,データサイズが増加する(問題a)」「データ配置を決定する基準値を実行するプログラムの挙動に基づいて動的に決定するのが困難(問題b)」という2つの問題が明らかになった.この問題は提案手法がデータごとの書き込みアクセス頻度を管理する方法に起因する.そこで,書き込みアクセス頻度の管理手法の改善に取り組んだ.結果として,問題a, b両方の解決を目指したmost recent write queue方式, 問題bの解決により焦点を当てたmulti-level queue方式の2つの手法を設計した.このうち前者については査読付き国際会議にて発表予定である.後者についても論文が査読中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の実施として計画した,プログラミング言語処理系が持つごみ集めの機能を応用した,不揮発性メインメモリにおけるデータ配置手法の設計と実装が完了している.この成果については,国際会議で2件の発表を行った.年度計画に基づいて提案手法の評価を行ったところ,提案手法は不揮発性メモリにおける効率的なデータ配置を可能にする一方で,メモリ利用効率やパラメータの汎用性に問題があることがわかった.そのため,提案手法の改善に取り組み,2つの代替手法を設計および実装した.その内容については,それぞれ国際会議論文を執筆し,1報は発表確定,もう1報が現在査読中である.以上のように,年度目標であった提案手法の設計,実装,評価,成果発表に取り組めていることから,本研究課題はおおむね順調に推移していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に設計と実装を行ったメモリ管理手法について,引き続き改善を行う.問題点を解決すべくこれまでに2つの代替方式について検討したが,さらに効率的な方式について検討を重ねる.検討した方式については適宜成果発表を行う. 平成26年度の研究では,プログラミング言語処理が持つ情報を用いることで計算機システムにおけるメモリ管理の効率化ができる可能性を見いだした.研究の新たな展開として,この知見を不揮発性メモリの管理以外に拡張することを現在検討中である.次年度ではこの点についても検討,実験を進めてゆく.また,その取り組みについては対外発表を行う.
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