本研究では,プログラミング言語処理系の機能を応用することで,不揮発性メモリを利用した不揮発性メインメモリを効率的に管理する手法を確立する.その研究の3年目として,本年度は(1)(2)に挙げる二つの課題に取り組んだ. (1)ふるまいに基づいたリソース管理 本研究のこれまでの成果から,プログラミング言語処理系とオペレーティングシステム(OS)が連携することによって,不揮発性メインメモリを効率的に管理できることがわかった.これは,プログラミング言語処理系レベルで得られる情報がOSレベルでのリソース管理に有用であることを示している.前年度は以上の背景を踏まえ,「リソース消費のふるまいに基づいたリソース管理」の検討と検証実験に取り組んだが,本年度はより具体的な利用を試みた.結果として,提案手法を三個の現実の問題に適用することができた.一つ目は,Webアプリケーションサーバに対するサービス拒否攻撃(DoS攻撃)の防止である.二つ目は,fork爆弾攻撃の防止である.三つ目は,コンテナ仮想化環境における異常検出である. (2)不揮発性メモリの接続規格の策定を背景とした提案手法の適用 本研究の計画段階では,不揮発性メモリとCPUを接続するインタフェースの策定は充分に進んでいなかった.研究開始後に,既存のDRAMとCPUのインタフェースであるDDR4 SDRAMを拡張したDDR4 NVDIMM規格の策定が進み,2016年9月に仕様書の初版が公開された.これを受けてNVDIMM規格に準拠した製品も登場しており,今後は不揮発性メモリを計算機システムに接続するための主要な手段になると見込まれる.これを背景として,NVDIMM規格で接続された不揮発性メモリを前提としたハイブリッドメモリアーキテクチャに対する提案手法の適用を検討した.
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