研究課題/領域番号 |
14J01853
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浅井 佑太 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 十二音技法 |
研究実績の概要 |
研究者はこれまでパウル・ザッハー財団に所蔵されているウェーベルンのスケッチ資料の分析を行い、彼の十二音技法の発展にかかわる諸作品の創作プロセスを明らかにしてきた。研究者はまず、彼が十二音技法を初めて試みた作品である《我が道は今や過ぎさり》作品15/4のスケッチ資料をもとに、その作曲プロセスを再構成し、ウェーベルンが最初期にどのように十二音技法を受容したかを明らかにした。この成果に関しては『阪大音楽学報』より発刊した。 また研究者は調査の間、財団が主催するコロキウムに講演者として招待された。講演の中で申請者は、財団での資料調査をもとにして、a) ウェーベルンが十二音技法の導入を試みる時期である1920年代の諸作品の創作プロセス、およびb) 彼が自身の音楽語法をどのように十二音技法に消化したかについて発表した。なおこの発表成果の一部は国際誌『Mitteilungen der Paul Sacher Stiftung』における掲載が決定している。この論文の中で申請者は、十二音技法採用直前の作品である《十字架》作品15/2の創作プロセスを明らかにした。 こうしたスケッチ資料の調査に加え、研究者はシェーンベルクとウェーベルンの往復書簡および著作の解読作業を平行して行ってきた。その結果申請者は、彼らが自身のスケッチが後世の研究の対象となることを生前から意識しており、これらの一次資料がそもそも創作プロセスを記録する媒体として使用されていたことを明らかにした。この成果に関しては、雑誌『美学』に投稿し、この論文はすでに掲載が決定されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
比較的順調に進展している。パウル・ザッハー財団での調査は充実したものであり、調査の結果を国際誌上で発表することもできた。また、他にも調査をもとにした論文をすでに完成させており、今年中には国際誌上で発表できると考えている。 また財団での調査中に、ウェーベルン全集の編集者たちの知己を得ることができた。彼らとは研究上、現在も連絡をとりつづけており、今後も研究を進める上で重要な存在でありつづけると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も資料調査を進める予定である。ただし博士論文の提出を控えているため、今後はむしろ在宅での資料の再検査および二次文献の精読作業が主たる研究となってくるだろう。博士論文の執筆にあたって、一次資料の再確認が必要である場合は、当該アーカイブでの調査を再度実施する予定である。
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