研究課題/領域番号 |
14J01860
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中山 遼平 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 追跡眼球運動中のコントラスト感度変化の異方性 / 日本視覚学会ベストプレゼンテーション賞 |
研究実績の概要 |
網膜上の運動信号は,眼球・身体運動により環境内の物体運動とは乖離しているにも関わらず,我々は一貫性のある運動を知覚している.例えば,右方向に移動する注視点を目で追いながら,注視点と等速で動く物体を観察するとき,我々は右方向への物体運動(網膜上では静止)を知覚することができる.視覚運動の知覚には,網膜上の輝度運動成分のみならず,モダリティーを越えて非網膜的な感覚運動情報が利用,統合されている. 報告者は,こうした座標変換を含む,高次の運動信号が,初期視覚系の応答感度において表現されている可能性を見出した.Schutzら(2007)は,追視中の運動パタンに対する検出コントラスト感度は,網膜上の時間周波数に依存し,追視と同方向への運動パタン(1 cycle/deg)に対する感度上昇を単なる空間的注意の効果に帰している.しかし,報告者による感度測定の結果,刺激の空間周波数が10 cycle/deg以上では追視と逆方向に運動するときに僅かな感度上昇がみられ,感度変化の非対称性の関係が逆転した. さらに等輝度色パタン刺激を用いると,空間周波数に関わらず,追視と逆方向に刺激が運動するとき,同方向と比べて高い感度が得られた.視覚系の小細胞チャンネルは高い空間周波数や色信号に感度をもつことから,感度変化の異方性は視覚処理のチャンネルに依存して生じていると推察される.過去の神経生理知見により,環境内での位置や運動に相関して発火するニューロンがV1を含む皮質の多くの領野で発見されていることを考え合わせると,初期視覚系が運動物体の座標系ごとに異なる感度特性をもつ可能性がある. 上記の研究成果は,日本視覚学会2015年冬季大会にてポスター発表をおこない,ベストプレゼンテーション賞を受賞した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的な感度特性の測定は完了し,上述通りの成果を得ている.ただし,これらの成果の根拠である感度変化が当初予測された数値よりも小さいため,観察者に提示する視覚刺激を工夫,最適化した上で,再度の感度測定をおこなうことを検討中である.
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今後の研究の推進方策 |
これまで本研究では,初期視覚系が運動物体の座標系ごとに異なる感度特性をもつ可能性を示した.とはいえ,視覚感度の増減分がただちに視覚センサー応答と相関しているという考えは尚早であり,応答関数に関する数理モデルの構築・検証や生態学的な整合性を含め,今後慎重に検討を加える必要がある.これらの検討と平行して,早期に論文化を進め,国際専門誌に投稿予定である.
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