研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に見いだした単一のルテニウム触媒によるカチオン・制御ラジカル同時重合系の最適化を行った。また、この重合系では達成できていなかった共重合を目指した検討も併せて行った。 1,カチオン・ラジカル同時重合-反応の最適化-:昨年度見出した,ルテニウム触媒によるイソブチルビニルエーテル(IBVE)のカチオン重合とメタクリル酸メチル(MMA)の制御ラジカル重合の同時重合系では、IBVEは定量的に消費される一方で、MMAの消費が途中で停止する問題があった。そこで、MMAの消費率の改善を目的とし,還元剤を系統的に検討した。その結果,銅触媒を用いたリビングラジカル重合に還元剤・助触媒として用いられるSn(oct)2を添加することで、MMAがほぼ定量的に消費され,ポリマーを与えることを見出した。生成物はIBVE,MMAそれぞれのホモポリマーの混合物であることがわかった。溶媒分別によって単離したそれぞれのポリマーのGPC測定により、機構の異なる二つの重合(カチオン・ラジカル)が同一系中で各々の長寿命生長種を経て進行していることが明らかになった。 2,カチオン・ラジカル同時共重合系の構築:ラジカル重合性モノマーをMMAよりかさ高さの小さいアクリル酸メチル (MA)に変更した。この結果、MMAを用いた場合と比べてやや高温を要するものの、両モノマー(IBVE, MA)とも消費され、ポリマーを与えた。得られたポリマーの13C NMR測定により、IBVEのカチオン重合に加えて両モノマーのラジカル共重合も進行していることがわかった。
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