研究課題
本年度も、既知の事柄で未知の事柄を理解する「メタファー」の概念に焦点を当てている。これまでの研究の中で、複数のデザイン主体が織りなす対話のプロセスが複雑な人間-環境系を対象としたデザインを行う上で重要な意味を持つという考えに至り、本年度は下記のような研究に取り組んだ。1.デザインの合意形成のプロセスにおけるメタファー複数のデザイン主体が最終的なデザインの決定に至る合意形成のプロセスを明らかにしていくことを目指した。まずはデザインプロセスにおける各主体の発話量や話者交替数の分析を行うことによって、メタファーを使用することで互いの議論が活性化され、対話的なプロセスが展開されることを確認し、そのプロセスは両者が同じ程度の活性度でその思考を展開していくプロセスであるというよりも、一方の主体が強い主導権を握った上でその思考が中心となって展開され、その上でもう一方の主体に共感や理解が生まれることで成立するものであることを確認した。2.対話を通した創発的プロセスとメタファーの関わりメタファーによって互いのアイデアが触発しあい、新しいアイデアを生み出す創発的プロセスが構成される仕組みを明らかにすることを目指した。そこでデザインのアイデア同士の関係を読み解くLinkography の手法やネットワーク分析の手法用いて各主体の思考の構造を比較した。その結果、メタファーを通してデザイン案のコンセプトとなるような重要なアイデアを主体間で共有し、両者が強い共感を持ちながらも、そこに潜在するメタファーの解釈のズレを起点としてそれぞれの主体が異なる方向へと思考を展開することで、結果としてデザイン対象の概念領域を拡げていく仕組みを明らかにすることができた。上記の内容と昨年度までの研究の成果をまとめ、「建築設計における創造的プロセスとしてのメタファーの研究」と題した博士論文の取りまとめを行った。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件)
日本建築学会計画系論文集
巻: Vol.80, No.714 ページ: 1787-1797
10.3130/aija.80.1787
巻: Vol.80, No.717 ページ: 2469-2479
10.3130/aija.80.2469