研究課題/領域番号 |
14J01960
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
岩澤 譲 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 原子炉 / 過酷事故 / 溶融物の冷却性評価 / 熱流体挙動 / 微粒化 / LIF / PIV / 格子ボルツマン法 |
研究実績の概要 |
原子炉において、炉心溶融を伴う過酷事故が発生した場合には、事故の影響を原子炉内に留めるために、炉心溶融物を原子炉圧力容器内において安定的に冷却保持することが不可欠である。本研究では、原子炉の過酷事故を対象に、冷却材中における溶融物の冷却性評価手法の構築を目的としている。本研究の意義は、原子炉の過酷事故を評価する際のデータベースおよび評価手法そのものを提供することであり、国内外を問わず原子力発電の安全性向上に資するものである。 高温溶融物が冷却される過程では、溶融物の界面が液-液接触状態において溶融物が微粒化する挙動に加えて、溶融物の界面が固化しつつある状態において溶融物が微粒化する挙動が想定されている。本年度では、実験的データベースの構築に重点を置き、溶融物が微粒化し固化に至るまでの物理メカニズムの解明のために必要な実験的知見を収集することを目的に、高温溶融物落下実験ならびに流体挙動可視化実験を実施した。また、これらの知見をもとに、格子ボルツマン法による数値シミュレーション手法が溶融物挙動の評価へ適用可能であるか検討した。これにより、実験で測定が困難な物理量や溶融物挙動の詳細な評価を行うことを目指している。 本年度の具体的成果は以下の3点である:(1)高温溶融物落下実験の結果、溶融物の表面が固化する条件においても、溶融物の侵入速度が十分に速い場合には、溶融物の表面が固化する条件しない条件と同様に界面不安定より微粒化する可能性を明らかにした。(2)流体挙動可視化実験の結果、PIVとLIFの同時計測により、溶融物の内外部の流動場と界面挙動の同時計測を行うことができた。(3)流体挙動可視化実験より得られた実験的知見を基に、格子ボルツマン法による溶融物挙動の数値シミュレーション結果との比較を行った結果、格子ボルツマン法が溶融物挙動へ適用可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度では、研究計画に従い、高温溶融物落下実験ならびに流体挙動可視化実験を実施することで、溶融物が微粒化し固化に至るまでの物理メカニズム解明に必要な実験的知見を得た。これに加えて、格子ボルツマン法による数値シミュレーション手法が溶融物挙動の評価へ適用可能であるか検討できた点は、計画以上の進展と判断する。しかしながら、溶融物が微粒化し固化に至るまでの物理メカニズムの考察のためには、より広範囲の条件やより精密な計測の実験を追加で実施する必要があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度では、研究計画に従い、高温溶融物落下実験ならびに流体挙動可視化実験を実施することで、溶融物が微粒化し固化に至るまでの物理メカニズム解明に必要な実験的知見を得た。よって、今後も研究計画に従い、溶融物が微粒化し固化に至るまでの物理メカニズムの考察のために、より広範囲の条件やより精密な計測の実験を追加で実施する予定である。次年度も、研究計画に従い、これまでに得られた実験的知見にもとづき、溶融物が微粒化し固化に至るまでの物理メカニズムの考察を行うことで、冷却材中における溶融物の到達距離や粒子径等を予測するための理論的な予測手法の構築を行う予定である。
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