原子炉で発生する可能性のある重大な事故の一例である、炉心燃料の溶融を伴う過酷事故が発生した場合、周囲環境に影響を与えずに、過酷事故を原子炉容器内で終息させるためには、溶融した炉心燃料(以下、溶融物)を原子炉容器内で長期安定的に冷却保持することが必要である。本研究は、炉心燃料の溶融を伴う過酷事故を対象に、冷却材中での溶融物の冷却性を予測・評価することが可能な手法の構築、および高精度化を目的とする。本研究の意義は、炉心燃料の溶融を伴う過酷事故を予測・評価するための実験的なデータベースの構築、さらには予測・評価が可能な手法そのものを構築・精度化し、提供することであり、国内外を問わず、原子力発電の安全性向上に資するものである。本年度では、前年度までに得られた実験的なデータベースに基づいた、溶融物が冷却材中に侵入する深さ(以下、ジェットブレイクアップ長さ)の予測手法、および溶融物の微粒化により生成する粒子径の予測手法を用いて、実際の原子炉を想定した、冷却材中での溶融物の冷却性の予測・評価が可能な手法の構築、および高精度化を実施した。さらに、炉心燃料の溶融を伴う過酷事故を、原子炉容器内で終息させるための設計指針、および評価基準を提示することを目指した。本年度の具体的な成果は次の点である:溶融物落下を模擬した実験により得られた実験的なデータベースに基づいた、ジェットブレイクアップ長さの予測手法、および溶融燃料の微粒化により生成する粒子径の予測手法を、既存研究により構築された、実際の原子炉を想定した溶融燃料の冷却性を予測・することが可能な手法に適用することにより、冷却材中での溶融物の予測・評価手法の高精度化を行った。さらに、実際の原子炉を想定した冷却材中での溶融燃料の予測・評価を行うことにより、炉心燃料の溶融を伴う過酷事故を原子炉内で終息させるための設計指針、および評価基準を提示した。
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