本年度は本研究課題の最終年度であり,主にこれまでの研究成果を取りまとめ,発表を中心に行った.本課題は,将来のエクサスケールコンピューティングに向けた,ネットワーク指向のストレージシステムを構成するための研究開発を目的としており,そのための主要な課題を,性能と信頼性の両立であるとした.一般に性能と信頼性はトレードオフの関係にあり,双方を同時に達成することは難しいとされていた.具体的には,信頼性を向上させるために付加されるデータが,ネットワークトラフィックを増大させることが主要因であり,この本質的な問題を解決することが求められている. 本研究では,信頼性向上のためにストレージノードの処理能力を活用するActive Storage機構や,将来のプログラマブルネットワークスイッチを活用する手法を提案した.これらの手法を用いることにより,トラフィックの増大を招く信頼性向上のための処理を,書き込み元からストレージノードやネットワークスイッチにオフロードすることができる.この結果,既存のシステムでは信頼性の向上によって性能が損なわれる場面においても,性能を維持することができた.本課題における性能とは,主にスループットを指しており,大規模データを円滑に取り扱う上では最も重要な側面である. 本年度はこれらの手法について,詳細および評価を国際会議などで発表した.発表会議にはIEEEが主催するものも含まれており,研究成果を周知する目的を十分に達成できたと考えている.
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