研究実績の概要 |
本研究ではBurkitt lymphomaを引き起こす原因ウイルスであるEpstein-Barr virus(EBV)がコードするDNAポリメラーゼ(Pol)に着目し、ウイルス産生感染時のウイルスゲノム複製を詳細に解析することを目的とした。特に、ヘルペスウイルス科のウイルスがPolに保存している特徴的なアミノ酸配列に着目し、このアミノ酸配列がEBVのウイルスゲノム複製においてどのように寄与しているのかを詳細に解析することを目指した。 平成27年度までに、このEBV Polのアミノ酸配列に変異を入れた組換えウイルスおよび感染細細胞(HEK293-EBV-BAC)を樹立し、アミノ酸配列を欠失あるいは変異させたウイルス感染細胞ではウイルスゲノム複製の効率が著しく低下することを明らかにした[Narita, Y. et al. Sci. Rep. 5, 11767; doi: 10.1038]。 平成28年度では、このアミノ酸配列がヘルペスウイルス特異的なものであるため、本研究課題が抗ウイルス薬開発等へ発展する可能性が高いと考え、アミノ酸配列のウイルス複製における作用メカニズムを明らかにすることを目指した。GST pulldown法や免疫沈降法にて得られた沈降物を質量分析装置で網羅的に解析することでEBV Polのアミノ酸配列と機能的に相互作用するタンパク質の同定を目指したが、適切な条件を見つけ出すことができなかった。これらは今後の検討課題であると考えている。
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