研究課題/領域番号 |
14J01996
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
全 俊豪 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 色素増感太陽電池 / 低温焼成 / 低コスト化 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では次世代の低コスト太陽電池として現在注目を集めている色素増感太陽電池について、紫外線と大気圧プラズマを併用した低温焼成技術を開発し、従来通りの変換効率や品質を維持したまま構成材料のより一層の低コスト化に成功した。 色素増感太陽電池は、基板にガラス板もしくはプラスチックフィルムを用いた2つのタイプがあるが、プラスチック基板型はガラス基板型の1/3以下のコストで作成できるため、低コストを特徴とする色素増感太陽電池においてはプラスチック型が本命である。しかし良質なTiO2光電極を製作するには450度から550度程度の高温で焼成する工程が必要不可欠であるが、プラスチック基板の耐熱温度はせいぜい150度しかない。そのためプラスチック基板型では高温焼成ができず、酸化チタン光電極の特性が著しく落ちてしまうことから、エネルギー変換効率がガラス基板型の半分程度しかないという問題点がある。本年度の研究の特徴は紫外線や大気圧プラズマで低温条件下(150℃以下)でも生成出来る化学的活性種を用いて、構成材料とエネルギー変換効率を維持したまま焼成温度だけを低下させ、ガラス基板、プラスチック基板双方に対応できる低温焼成法を開発したことである。その結果、薄膜条件下では従来のエネルギー変換効率を維持したまま、高価な耐熱ガラスではなく安価なガラスやプラスチックを基板に使用できるようになり、低コストな色素増感太陽電池のより一層の低コスト化に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は当初予定通り、おおむね順調に進展している。色素増感太陽電池の焼成温度を450度から150度に下げるため、酸化チタン光電極の紫外線処理とプラズマ処理を組み合わせた独自の手法を平成26年度開発した。そして、開発した手法を用いて150度焼成で作成した太陽電池のエネルギー変換効率は、従来の450度焼成で作成したものと遜色ないところまで達成した。このような新しい手法を実用化するには原理解明が必要だが、XPS、SEM、インピーダンス計測、吸光度計測を通して酸化チタン光電極の特性を調べ、原理解明も大きく進展した。以上の研究成果は、今年度のApplied Physics LettersおよびJournal of Applied Physicsに論文として掲載され、また国際学会での発表も数件あり、広く認められている。
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今後の研究の推進方策 |
薄膜の色素増感太陽電池では当初の研究目的を達成できているため、今後の研究は厚膜条件でも同様な成果を達成できるように推進していく方向である。原因解明の結果、本研究手法の従来法に比べて酸化チタン膜の電子拡散長が短い問題点を発見し、この問題点を解決することで厚膜条件でも当初の研究目的を達成できていると考えている。具体的な対策法としては大気圧プラズマ装置を改良して、放電条件を室温から150度程度まで上げることで酸化チタン膜の電子拡散長を増加させることができると考えられるため、上記の改良をまず行う。
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