研究課題/領域番号 |
14J02022
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柴田 大樹 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | スーパー代数群 / スーパー・シュヴァレー群 / ホップ代数 / モジュラー表現 / 超代数 / ユニモジュラー / シュヴァレー群 / スーパー対称性 |
研究実績の概要 |
スーパーとは“{0,1}-次数付け”と同義語である.スーパー可換代数の圏から群の圏への表現可能関手Gであり,表現するスーパー可換代数が有限生成であるものをスーパー代数群(スキーム)という.このGの定義域を可換代数の圏に制限したG’は通常の代数群(スキーム)である.シュヴァレー群のスーパー類似としてFioresiとGavariniはスーパー・シュヴァレー群Gを構成した.付随する代数群G’は(広義の)シュヴァレー群である.近年,増岡彰氏(筑波大学)との共同研究により,このスーパー・シュヴァレー群の統一的な構成が可能になった.さらにその表現論をルート系の言葉を用いて研究する手段を得ている.そこで本研究ではスーパー・シュヴァレー群の表現に関する下記の二項目(A),(B)に焦点を絞り研究を行ってきた. (A)積分に関する研究.局所コンパクト群上のハール積分の類事物として(スーパー)代数群上にも積分の概念がホップ代数の言葉を用いて定義される.局所コンパクト群の場合と同様にして積分はその表現論において重要な役割を果たす.積分の存在性に関しては,増岡彰氏とC.Pastro氏(九州大学)との共同研究により,連結スーパー代数群が積分をもつことと付随する代数群が積分をもつことが同値であることが分かった.他方で,両側作用不変な積分を持つときにその群はユニモジュラーであるといわれるが,スーパー・シュヴァレー群のユニモジュラー性に関する結果も得た. (B)既約表現に関する研究.スーパー・シュヴァレー群Gの“dense big cell”をホップ代数的に定式化することにより,Gの既約表現全体とウェイトのある部分集合との一対一を示すことができた.また基礎体の標数が正のとき,既約表現のテンソル積への分解の様子を記述するSteinbergのテンソル積定理の成立を,任意のスーパー・シュヴァレー群に対して示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.増岡彰氏(筑波大学)とC.Pastro氏(九州大学)との共同研究により,交付申請書の「研究の目的」に予想として記述していた“連結スーパー代数群が積分をもつことと付随する代数群が積分をもつことが同値である”という主張を示すことができた.また「研究の目的」には記載していなかったが,積分に関する別のトピックとして,スーパー・シュヴァレー群のユニモジュラー性に関する結果を得ることができた. 2.スーパー・シュヴァレー群の既約表現全体をウェイトのある部分集合で完全にパラメータ付けすることができた.これは交付申請書の「研究の目的」にて設定した “スーパー・シュヴァレー群の既約表現をより組織的に行え” という問題に対する一つの回答となっている.また 「研究の目的」の項目の一つとして記載した“Steinbergのテンソル積定理がスーパー・シュヴァレー群に対して成立するか否かを明確にせよ”という問題に関しても,主張が成立することを示すことにより,問題を解決することができた. 3.以上これらの研究成果を国内・国外の研究集会で発表した.
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今後の研究の推進方策 |
大きく分けてスーパー・シュヴァレー群の表現に関する下記の二項目(A),(B)に焦点を絞り研究を行っていく. (A)積分に関する研究.積分の研究は群の表現論において重要な役割を果たしている.例えば(スーパー)代数群Gが線形簡約であることの必要十分条件はGが“全積分”を持つことと言い換えられる.増岡彰氏(筑波大学)とC.Pastro氏(九州大学)との共同研究により,スーパー・シュヴァレー群Gが積分を持つことと付随する代数群G’が積分を持つことは同値であるとわかった.さらにGのスーパー・リー代数Lie(G)のルート系の言葉を用いることで,G’の積分が与えられたときにGの積分を具体的に書き下す公式を得ている.そこで今後の課題としては,この公式を用いて積分が全積分であるかどうかを判定する条件を求めていきたいと思う. (B)既約表現に関する研究. これまでの研究でスーパー・シュヴァレー群の既約表現全体をウェイトのある部分集合Lで完全にパラメータ付けすることができている.スーパーでない場合はこのLに相当するものは,いわゆる支配的ウェイト全体の集合と対応しており,組み合わせ論的解釈を有する集合であるが,スーパーの場合は一般にはそうではない.そこで今後の課題としては,このLに組み合わせ論的解釈を与えてみたいと思う.
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