研究課題/領域番号 |
14J02108
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松田 昇也 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | EMIC波動 / 内部磁気圏 / プラズマ圏 / あけぼの衛星 / ERG衛星 / イオン組成比 |
研究実績の概要 |
本研究は,内部磁気圏を探査する日本の次世代科学衛星ERGの打ち上げに向け,プラズマ波動観測器PWEの観測戦略の立案と機上処理ソフトウェア開発を行うことを目的としている.当該年度はERGで観測が期待される電磁イオンサイクロトロン(EMIC)波動に着目し,あけぼの衛星によるプラズマ波動観測データの解析から主にプラズマ圏周辺でのEMIC波動の特徴を押さえ,観測戦略へ応用することを目指した.その結果,プラズマ圏周辺では通常のサイクロトロン共鳴を起源として発生するEMIC波動だけでなく,電子モードの磁気音波,あるいは雷起源のホイスラ波動を起源とするEMIC波動が多数観測されていることがわかった.また観測されたEMIC波動は水素イオンバンドから酸素イオンバンドまでの5バンドにも及び,その中には質量対電荷比が2あるいは8となるマイナーイオンバンドのEMIC波動が含まれていることを明らかにした.本結果はプラズマ圏EMIC波動の特徴を知るという観点でも重要であるが,マイナーイオンを含む豊富な重イオンがプラズマ圏内に蓄積されていることを示す結果としても大変興味深い.観測されたEMIC波動の特性周波数を詳細に観測・解析することは,その波動の伝搬特性や伝搬経路周辺の環境を議論する上で極めて重要である.ERG衛星でも近地点通過時に同様の波動が観測されるとみられ,さらなる詳細観測のためにプラズマ波動観測の分解能と出力データ仕様の立案に携わった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
あけぼの衛星の観測データを用いた解析は極めて順調に経過しており,その結果を反映した新観測戦略の立案に既に着手していることから当初の計画は十分に遂行できていると考える.当該年度中のこれまでの成果は,Journal of Geophysical Research誌に2本,Geophysical Research Letters誌に1本それぞれ論文が採録され,当初の予定を上回る進度で研究が進展している.
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今後の研究の推進方策 |
あけぼの衛星の全観測データは26年間分にも及ぶため,いまだ未着手の解析期間が残っている.長期観測データを用いた解析は,太陽活動度等に起因するプラズマ波動の特徴の長期変動を議論するうえで重要であり,引き続きその解析を進めて観測戦略への応用を検討する.また,立案した観測戦略の機上実装を進め,2016年に予定されているERG衛星の打ち上げに備える.
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