研究課題/領域番号 |
14J02125
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
玉置 瞳美 北海道大学, 総合化学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 応答性分子 / 酸化還元系 / エレクトロクロミズム / 色素 / 分子素子 / 動的酸化還元 / フッ化芳香環 |
研究実績の概要 |
複数のdyrex(動的酸化還元)ユニットを連結した化合物は、1分子nビットの記憶素子やπ共役長の変化を利用したスイッチング素子、抵抗素子などへの展開が期待できる。その多段階電子移動挙動は、目的の分子素子へと発展させる際の連結スペーサーや様式を選択する上で重要となってくる。本研究では、2つおよび3つのdyrexユニットをスペーサーで連結された化合物の合成を行い、それらのdyrex挙動について調査を行った。用いたdyrexユニットは、ビフェニル部の水素をすべてフッ素化したジアリールエテニル型およびヘキサフェニルエタン型誘導体である。連結位置としてパーフルオロビフェニルの4-位に連結置換基を導入することで、ビフェニルの長軸方向に共役系の拡張を行い、その連結スペーサーとしては、π共役系のジインおよびそれにパラフェニレンを挿入したものをデザインした。また、それらの比較化合物としてメタフェニレンをジインに挿入したもの、ベンゼン環の1,3,5-の位置で連結したディスク型分子も設計した。カップリング前駆体であるエチニル体の合成は、アセチリドを作用させることで得られ、その連結位置はジアリールエテニル型ではX線構造解析により確認した。また、目的の連結化合物はグレーサーカップリング反応および対応するヨードベンゼンとの薗頭カップリング反応によって得られた。得られた化合物の電解酸化およびサイクリックボルタンメトリー法による検討から、これらが望むdyrex挙動を示すことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
化合物の合成が最大の難関と予想されていたが、二系統のシリーズについて、いずれも最終目的化合物群を単離することができたのは、期待以上の結果である。ジアリールエテニル型dyrexユニットの移動電子数については、同じ電極・掃引速度・濃度で測定したサイクリックボルタモグラムから、連結ユニット数の増加に対応して、電流量も増加した一波形の酸化波および還元波を示したことから、ダイアド体では一波形四電子移動、トリアド体では一波形六電子移動を伴う酸化・還元が生じることが分かった。これより、連結されたユニットがもう一方のユニットへ、空間的にもスペーサーを介しても影響を与えないことが示された。 電解酸化の様子をUV-Visスペクトルで追跡した結果から、どちらのユニットを用いても等吸収点を持ち、その電解の終盤において、カチオン部位に特徴的な長波長部のスペクトル強度が、ユニットが1つの場合と比較して増大していることから、少なくとも1部の分子は対応するテトラカチオンやヘキサカチオンへと変化していることを確認した。これより、連結されたユニットのスペクトル的な独立性も確認された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、連結化合物のジカチオン種・テトラカチオン種・ヘキサカチオン種の溶液中での発生には成功している。一方、より詳細な電子移動挙動を明らかにするためには、それらを塩として単離することが重要であるため、各カチオン種の単離を行い、それらのdyrex挙動の調査を行う。また、ビフェニル長軸方向にユニットを3つ、4つ連結した化合物の合成とそれらのdyrex挙動調査を行い、末端と中心部のユニットで挙動の違いを生じるか、同様の手法で検討する。 さらに、異なるユニットを連結した化合物の合成に挑戦する。
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