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2014 年度 実績報告書

不安定核における二核子相関の普遍的性質の究明

研究課題

研究課題/領域番号 14J02221
研究機関新潟大学

研究代表者

小林 史治  新潟大学, 自然科学系, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2014-04-25 – 2017-03-31
キーワード不安定原子核構造 / クラスター相関
研究実績の概要

現在中性子過剰核特有の物理として理論的にも実験的にも盛んに議論がなされているダイニュートロン(ダイプロトン)相関について研究を進めた。ダイニュートロン(ダイプロトン)相関とは自由空間では非束縛な二中性子(二陽子)が核物質の低密度領域中や不安定核の表面付近において強い空間的な相関を持つというものである。このダイニュートロン(ダイプロトン)相関に関しては、これまで既存の枠組みの適用限界からごく一部の原子核でしか研究がなされておらず、有限原子核中における普遍的な性質や促進・減衰機構はいまだ全く明らかになっていない。
そこで本研究では様々な原子核に普遍的に適用できる模型である反対称化分子動力学(AMD)を用い様々な不安定核の系統的研究を進めている。そして、AMDを用いて記述した原子核系において、核表面付近の二核子の運動を詳細に議論するための解析方法を新たに構築し、それを用いて解析を進めている。今年度は軽い不安定核である6He, 10Be, 13Oをダイニュートロン(ダイプロトン)相関という観点で詳細に解析した。その解析から原子核の変形構造が核表面付近におけるダイニュートロン(ダイプロトン)相関形成に有意な影響を及ぼすことを初めて示唆し、現在論文にまとめている段階である。二核子間の空間的相関の普遍的性質の解明に向けた手法が確立しこれまでにダイニュートロン(ダイプロトン)相関という観点からは研究なされていない原子核の系統的研究が可能になったことにより、ダイニュートロン(ダイプロトン)相関の理解における更なる進展が次年度以降大いに期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

広い領域における原子核中の系統的なダイニュートロン相関の研究が本研究の最大の目標であるが、現時点まではそのためのダイニュートロン相関に関する記述・解析方法の構築に尽力し、それらを完成させることができた。
新たな研究環境に移ることで、より多くの研究者と触れ合う機会ができ、これまでにはなかった視点からのコメントやアドバイスをいただきそれらを自分なりに咀嚼し理解することで、新たな観点から自らの研究を見直すことができた。それらのコメントやアドバイスを大いに参考にしながらダイニュートロン相関研究のための独自の枠組みを構築・発展させ、より容易に様々な構造を持った中性子過剰核の記述が可能になった。更には新たな解析手法を構築し、これまではあまりなされてこなかった観点からダイニュートロン相関の形成機構やその振る舞いが理解できるようになり、これまでの先行研究では研究なされ得なかった原子核におけるダイニュートロン相関の系統的研究が可能になった。
本年度は手始めとして、その枠組みを異なる構造を持ったいくつかの原子核に適用した。まだ本来の目的である大規模な系統的研究とまでは至っていないが、それらの原子核の記述・解析はうまくいっており本研究の枠組みの妥当性・有用性を確認するとともに、先行研究にはない示唆もなすことができ、それは今後の方針にも繋がる大きな進展ではある。
これからの研究の準備段階としてこの初年度の研究は順当に進められたと考えている。

今後の研究の推進方策

ダイニュートロン相関の系統的研究のための枠組みがほぼ完成したので、次の段階としてそれを様々な原子核に適用する中でダイニュートロン相関の一般的な形成・促進・減衰機構を明らかにし、原子核中でのその振る舞いの統一的な理解を果たしたい。
例えば、二つの中性子が芯に対して極めて弱束縛で、芯の周りに低密度で大きく広がった分布をする二中性子ハロー原子核(11Li, 22C, 17,19Bなど)において芯の周りでダイニュートロン相関がどのように発達するのかを明らかにする。その際には芯の構造がダイニュートロン相関にどのような寄与を及ぼすかなどの観点で、それらのハロー核中でのダイニュートロン相関の性質を比較し類似点・相違点を明らかにする。ハロー核以外の原子核におけるダイニュートロン相関の性質とも比較することにより、弱束縛性がどのようにダイニュートロン相関に影響するのかなども明らかにしたい。
また強いダイニュートロン相関を含んだ励起状態を、例えばBe, C, O同位体において議論する。ダイニュートロン相関を含む励起状態の研究は理論的にも実験的にもほとんど進んでおらず、その存在は未だ確認されていない。本研究の枠組みを用い、そのような励起状態中のダイニュートロン相関の振る舞いを研究するとともに、それらの励起状態に共通して見られる特徴などを明らかにし、実験的に測定するためにはどのような観測量が適当であるかを探る。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2015 2014

すべて 学会発表 (6件)

  • [学会発表] 芯の構造に依存したダイニュートロン相関促進と抑制の研究2015

    • 著者名/発表者名
      小林史治 延与佳子
    • 学会等名
      日本物理学会第70年次大会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2015-03-21 – 2015-03-24
  • [学会発表] Dineutron correlation in the ground states of p-shell neutron-rich nuclei2014

    • 著者名/発表者名
      Fumiharu Kobayashi and Yoshiko Kanada-En'yo
    • 学会等名
      ISPUN 2014
    • 発表場所
      Ho Chi Minh
    • 年月日
      2014-11-03 – 2014-11-08
  • [学会発表] Dineutron correlation enhancement in p-shell nuclei2014

    • 著者名/発表者名
      Fumiharu Kobayashi and Yoshiko Kanada-En'yo
    • 学会等名
      Hawaii 2014
    • 発表場所
      Hawaii
    • 年月日
      2014-10-07 – 2014-10-11
  • [学会発表] Dineutron correlation in p-shell neutron-rich nuclei2014

    • 著者名/発表者名
      Fumiharu Kobayashi and Yoshiko Kanada-En'yo
    • 学会等名
      Nuclear Structure 2014
    • 発表場所
      Vancouver
    • 年月日
      2014-07-12 – 2014-07-25
  • [学会発表] Dineutron correlation in p-shell neutron-rich nuclei2014

    • 著者名/発表者名
      Fumiharu Kobayashi and Yoshiko Kanada-En'yo
    • 学会等名
      ARIS2014
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2014-06-01 – 2014-06-06
  • [学会発表] Two-dineutron condensation in the excited state of 8He2014

    • 著者名/発表者名
      Fumiharu Kobayashi and Yoshiko Kanada-En'yo
    • 学会等名
      SOTANCP3
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2014-05-26 – 2014-05-30

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公開日: 2016-06-01  

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