最終年度である本年度は、これまでの研究実績をまとめて学会発表や論文投稿を行うとともに、2016年10月よりフランスにて資料調査、成果発表を行った。 まず、2016年6月には日本比較文学会全国大会にて、フランスにおける日本研究の先駆者の一人であるクロード・メートル(Claude Eugene Maitre 1876-1925)についての口頭発表を行った。メートルの死により、未完に終わってしまった彼の業績は、これまで本格的に論じられることがなかったが、今回、手槁などの一次資料を用いて、彼の目指した総合的な日本研究を明らかにし、ジャポニスム時代からポストジャポニスム時代への移行期を象徴する重要な人物として位置づけた。 また、同時期の美術行政面での大きな役割を果たした人物としてレイモン・ケクラン(Raymond Koechlin 1860-1931)を取り上げ、2016年10月のジャポニスム学会シンポジウムで口頭発表を行った。従来研究では、ケクランはジャポニスム時代の証言者としてのみ論じられることが多かったが、日本美術愛好家のネットワークにおいて豊富な人脈を持ち、コレクターらに国立美術館への日本美術寄贈を促す活動を熱心に行っていたことを明らかにした。 ルーヴル美術館の日本美術コレクションについては、1893年の日本美術室開設期に絞って、まず『ジャポニスム研究』に投稿論文として発表した。日本美術室開設に至るまでのケクランやジョルジュ・クレマンソー(Geroges Clemenceau 1841-1929)の働きかけや、最初期の具体的な寄贈品についてなど、国立美術館諮問委員会議事録などの一次資料を用いて論じた。2016年10月からのフランスでの資料調査によって、さらにルーヴルの日本美術コレクションについて詳細を明らかにし、2017年3月にギメ美術館にて研究発表を行った。
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