①:経口避妊薬の連日長期投与による排卵抑制モデルマウスの作成を行い、PMSG・hCGを使用した排卵誘発を利用しての排卵数の比較という生殖能力の解析をした。その結果、12ヶ月齢という高齢マウスにおいて、2ヶ月齢からの長期間投与で、排卵数・胎児数ともに有意に増加する効果をえた。生殖能力の保護効果の作用機序を推測する目的で、次に卵巣組織の組織切片のHE染色・特殊染色・免疫染色を施行した。卵胞数に有意な差はでないものの、卵巣の線維化の減少という所見を発見した。同時に投与期間を短縮したモデルを作成し、経口避妊薬の投与が効果的であるのは10から12ヶ月齢の期間である可能性が高いことを示した。 ②:ヒトについては、大学病院の不妊治療成績の統計解析を行った(マウスの排卵誘発との比較で体外受精に注目した)。マウスのコントロール群では、8-10ヶ月齢で排卵数の著明な低下が始まり、12-14ヶ月齢で急落することがわかったが、ヒト初産婦では35歳程度から著明に低下し、40-42歳で妊娠チャンスがほとんど消失することがわかった。両者を単純に比較できたと仮定し、ヒト初産婦においては経口避妊薬の使用が35歳程度からが効果的であると推測した。また、卵巣組織について、子宮頚癌・体癌の摘出卵巣の組織切片を解析して、加齢性に線維性組織が増加する可能性が指摘でき、モデルマウスで発見された現象に近いことが指摘できた。 ③:SIRT 3 ノックアウトマウスの解析については、過去の報告から受精後の胚発生異常という表現型が期待されたが、排卵数や受精後の胚発生で差がでなかった。その点は加齢マウスに限らず、若年個体でも明らかな表現型がないという結果となった。 以上から、モデルマウスによる基礎実験結果を中心とした報告、ヒトの不妊治療成績の効果を統計学的に解析した報告にわけて、現在英文で登校中である。
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