研究課題/領域番号 |
14J02279
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
西田 彰一 総合研究大学院大学, 文化科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 筧克彦 / 日本体操 / 帝国日本 / 身体技法 / 神道 / 憲法学 / 国体 |
研究実績の概要 |
申請者は近代天皇制と身体技法がどのように関わったのかという問題を解明するために、これまでもっぱら神道思想家として知られてきた筧克彦の身体技法に注目している。従来筧克彦は戦前の皇室や神社行政、植民地に多大な影響を与えた人物として知られている。しかし、筧が体操や健康法を通した人々の身体への働きかけを重視していたことに着目した研究はこれまで殆どなかった。そこで、申請者は筧がどのような方法で国民の身体への働きかけを行ったのかを題材として、近代天皇制と身体技法の関係を明らかにしたいと考えている。 今年度申請者が注目したことは、法学者としての筧克彦である。筧は神道思想家として著名であるが、憲法と国体の関係を研究していた法学者であったということはあまり知られていない。しかし、筧は戦前を代表する憲法学者である、美濃部達吉や上杉慎吉らと同時代の人物である。しかも、筧・美濃部・上杉の三者はお互いの議論を意識しあっていた。こうした筧の法学者としての一面を明らかにできれば、筧の思想的背景についての理解を深めることにつながる。そのうえ、これまで天皇機関説(美濃部)対天皇主権説(上杉)で知られていた明治憲法をめぐる思想的対立の構図に、筧を第三極として加えることも可能になるのではないかと考えられる。そこで、今年度は美濃部と上杉の議論と比較検討することを通して、法学者としての筧の思想的背景の解明に取り組んだ。そして、彼がどのような国家構想を抱き、日本体操(やまとばたらき)に代表されるその身体技法を用いて、どのように国民の身体に働きかけようとしたのかについて検討を試みた。 今後は身体技法そのものだけでなく、筧の思想的背景にも詳しい考察を深めていきたい。そのうえで、筧の思想と結びついた身体的実践がどのように広まっていったのかについて、検討を加えていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は法学者としての筧克彦の側面にせまった。これによって、彼が自らの国体論に基づく国家構想を日本体操などの身体技法を通して、国民の身体に働きかけようとしたことを明らかにした。また、日本体操をはじめとして、筧克彦の身体技法に関する基本的理解を得ることができた。 筧克彦の歴史的な位置づけや同時代の身体技法との比較検討などに補足したい部分はあるが、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後については、まず今年度の研究内容を論文としてとりまとめる。そして、筧克彦の国家構想と身体技法のむすびつきを明らかにし、身体技法そのものだけでなく、筧の思想的背景にも詳しい考察を加えていきたいと考えている。そのうえで、筧の思想と結びついた身体的実践がどのように広まっていったのかについて、①政治家・官僚及び②農本主義者を中心とする社会活動家からそれぞれどのように見られていたのかについて、検討を加えていくつもりである。
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