研究課題/領域番号 |
14J02298
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
渡邊 桂子 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 従軍記者 / 戦争特派員 / 情報統制 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本における従軍記者制度について、日清戦争以前に行なわれた外交・軍事的事件への記者派遣事例における新聞社と統制主体(政府、軍)双方の姿勢を通時的に分析することで、確立過程という視点から捉えなおすことである。 採用一年目である本年度(2014年度)の課題は、壬午事変・甲申事変を対象に事例分析を行なうとともに、研究全体の分析視角をより深化させることであった。そのため、(1)新聞、公文書、および関係者の私文書を利用した個別事例分析、(2)分析概念の精緻化と海外の事例の把握という方法で研究を進め、さらに本研究の一部をなす修士論文をもとに報告を行なった。 (1)については、①新聞記者と新聞社の行動、②政府と陸海軍による情報統制の二点から検討し、両者の関係性を分析した。①新聞紙面をもとに派出された主な新聞記者とその移動についてのデータをまとめ、新出史料である鳥居家史料(茨城県立博物館蔵)を利用して情報を補完した。②公文書をもとに検討を進め、情報統制の方法が西南戦争の前例を踏襲していること、外務省が徐々に主導権を握っていくことを明らかにすることができた。①と②の関係性については、国内と朝鮮半島における情報統制姿勢の連動を一定程度明らかにできたものと認識しているが、不十分と感じる点は論文化する際に改善したい。 (2)については、日清・日露戦争における従軍記者規則の規定を確認するとともに、war correspondentや「埋込み取材」に関する国内外の研究を読み込み、「従軍記者」という日本語の意味と本研究におけるこの用語の位置づけを練り上げた。また、同作業を通して海外における戦地への記者派遣事例に関する知識を得ることに務めた。以上の成果は、修士論文をもとにした報告に随時反映した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
修士論文で扱った西南戦争の事例は本研究の基礎となるため、当初の計画では採用一年目の段階で学術雑誌に投稿する予定であった。しかし、諸研究会での報告を行なうなかで研究全体における同論文の位置付けを見直す必要性を感じ、論文の内容と構成を再考したために遅れが生じ、達成することができなかった。そのため、本研究は当初の研究計画からやや遅れていると判定したが、年度末時点での同論文執筆作業は順調に進んでおり、本年度対象とした個別事例の分析もおおむね順調に進んだため、次年度中に挽回できるものと見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)成果報告:採用一年目に達成できなかった修士論文をもとにした論文の学会誌への投稿と、採用一年目の成果発表を行う。 (2)2014年度課題の補完:採用一年目の個別事例分析はおおむね順調に進んだが、記者の行動と情報統制、人員統制の関係については分析が未だ不十分である。そのため、この点については分析を継続し、補完していきたい。 (3)次年度の研究計画への移行:当初より採用二年目の分析対象として想定していた日清戦争の事例分析に移行する。なお(2)で述べたように、2014年度の設定課題には一部達成されていない部分があるため、次年度前半は同課題の達成を中心にすすめ、後半は次年度課題の本格的分析に移行したい。
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